研究課題/領域番号 |
15K10813
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
熊井 良彦 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (00555774)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ピルフェニドン / TGF-β / αSMA / コラーゲン / リアルタイムPCR |
研究実績の概要 |
オスフェレットの右声帯を電気メスで焼灼し、処置後2週で喉頭を摘出し瘢痕声帯粘膜から線維芽細胞(瘢痕線維芽細胞)を分離培養した。同様に正常の声帯粘膜からも線維芽細胞(正常線維芽細胞)を分離培養した。両者をTGF-βを混和した培養液にピルフェニドンを0mg/ml、0.5mg/ml、1.0mg/mlの濃度条件に分けて添加し48時間培養した。細胞を回収し、線維化の指標となるαSMA、TGF-β、Ⅰ型コラーゲンのmRNAの発現を定量PCRで評価し、タンパクの発現について免疫染色で評価した。また、コラーゲンゲル収縮アッセイを用いて瘢痕収縮に対する効果も検討した。 【結果】正常線維芽細胞、瘢痕繊維芽細胞の両者でαSMAは定量PCRではピルフェニドン濃度0.5mg/mlで発現が上昇していた(p<0.05)が、免疫染色では発現上昇は見られなかった。また、いずれの細胞でもTGF-βのmRNAの発現はピルフェニドン濃度依存性に増加した(p<0.01)。瘢痕繊維芽細胞ではⅠ型コラーゲンの発現は定量PCRでも免疫染色でもピルフェニドン濃度依存的に減少していた(p<0.05)。コラーゲンゲル収縮アッセイではピルフェニドン濃度依存性にゲル収縮の程度が抑制された。 これらの結果を学会発表し、論文にまとめているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでのin vitro研究でピルフェニドンがフェレット瘢痕声帯より分離した線維芽細胞にたいして瘢痕抑制の効果を示された。しかし、当初の仮説とは結果が一致しておらず、ピルフェニドンの瘢痕抑制効果について、その機序についても検証が必要と考えられた。そのため、平成28年度もin vitro研究を継続し、in vitro研究で十分な成果が得られたのちにin vivo研究に移行する予定としている。
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今後の研究の推進方策 |
ピルフェニドンによるTGF-β、αSMA、コラーゲンの動態のうち、αSMA、TGF-βの動態が仮説と異なっていた。TGF-βの動態とコラーゲンの動態が異なっていることについて、TGF-βのシグナル伝達が関係していると考えられた。TGF-βのシグナル伝達を担うSmad系タンパクの推移について、免疫染色、Western-blottingを行い検討を行う予定としている。 In vitro研究で十分な検討を行った後にin vivo研究に移行する予定である。
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