研究課題
頭頚部扁平上皮癌は比較的稀であり、全てのがんの5%程度の発生頻度だが、近年増加傾向にある。進行状態で発見されることが多いこともあり、全体的な予後は良好とは言えない。また、従来の治療方法では完治が得られてもQOLの低下が避けられないケースが多いことも事実である。疾患の早期発見や新たな治療方法の開発が望まれて久しい。頭頚部扁平上皮癌における早期診断および機能障害を伴わない分子標的治療が求められている。細胞間接着タイト結合分子であるJunctional Adhesion Molecule-A(JAM-A)は、様々な癌細胞で高発現がみられ癌の悪性化である浸潤および転移への関与が考えられている。本研究は、頭頸部扁平上皮癌の悪性化におけるJAM-Aの役割および発現調節機構を解明し、 癌の補助診断および分子標的治療の可能性を検討するものである。頭頸部扁平上皮癌患者において、血清可溶化JAM-Aの高値がみられ、術後の低下傾向が認められた。頭頸部扁平上皮癌におけるJAM-Aの発現調節は、頭頸部扁平上皮癌株および初代培養癌細胞を用いた実験により、p63/GATA-3を介して調節されていた。さらにWnt, EGFR, p38 MAPK, Hedgehogシグナルなどの様々なシグナル伝達経路を介しても調節されていた。p63の発現を低下させる作用をもつヒストン脱アセチル化酵素(HDCA)の阻害剤を処置した結果、頭頸部扁平上皮癌株のJAM-Aの発現低下とともに癌細胞の浸潤・遊走・増殖の抑制がみられた。以上のことより頭頸部扁平上皮癌の悪性化に密接な関与がみられるJAM-Aは、新規の血清癌マーカとしての可能性が考えられ、抗腫瘍効果が知られているHDAC阻害剤の分子標的になりうると思われた。
すべて 2017
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Ann N Y Acad Sci.
巻: 1405 ページ: 25-31
10.1111/nyas.13456.