研究課題
IgG4関連涙腺・唾液腺炎(IgG4-DS)はIgG4関連疾患に含まれ,持続する涙腺・唾液腺の腫脹および腺分泌障害を認める疾患であり,ときに自己免疫性膵炎などの他臓器合併症を伴う.組織学的にはIgG4陽性形質細胞浸潤に加え,storiform fibrosis patternなどと呼ばれる特徴的な線維化を来すが,同じ患者から採取された小唾液腺(口唇腺)と大唾液腺(顎下腺)を比較すると,小唾液腺ではほとんど線維化が認められないことがわかった.33症例の検討では,IgG4関連疾患の診断基準を満たすものは,顎下腺では100%であったのに対し,口唇腺では60%に満たなかった.また線維化の程度も顎下腺では非常に強い所見であった.線維化パターンの内訳として,花筵様81.8%,渦巻様3.0%,硝子様3.0%,非特異的12.1%であった.また特徴的所見と言える閉塞性静脈炎は,顎下腺組織の27.3%に認められた.確立した培養系は,hTERTを導入し延命化したヒト顎下腺導管上皮培養細胞で,培養法はヒト膵管上皮細胞の培養法に準じた.正常顎下腺およびIgG4-DS由来顎下腺において,タイト結合関連蛋白であるClaudin-4,-7,Occludin,JAM-Aが 導管上皮の頂端側で認められ,両者の発現に違いは認められなかった.RT-PCR解析,ウェスタンブロット解析においても同様の結果が得られている.培養細胞は,顎下腺導管上皮のマーカーであるCK7を発現し,間葉系マーカーであるビメンチンの発現は認めてなかった.各タイト結合関連分子の免疫染色を行うと,正常由来顎下腺導管上皮細胞,IgG4-DS由来 顎下腺導管上皮細胞,いずれにおいてもClaudin-4,7,Occludin,JAM-Aの各種タイト結合関連蛋白が 細胞膜上に発現していた.
2: おおむね順調に進展している
臨床病理学的データを中心に,充分にデータが蓄積されてきている。また,唾液腺導管上皮細胞培養系も安定して維持されている。また予備実験から,着目すべき分子も見つかっており,研究焦点を絞って次年度の解析を行うことができる。
顎下腺組織の線維化メカニズムを探るため,線維芽細胞のマイクロアレイ等を行ったところ,TSLP,IL-33,IL-6,IL-18,MMP-1が着目すべき分子と考えられた。IgG4関連疾患患者由来の顎下腺線維芽細胞および対照の顎下腺線維芽細胞における前述の分子の発現変化を検討する。さらに,各種サイトカイン(TGF-b,IFNg,EGF等)処置を行い,発現変化を調べる。また,線維芽細胞と導管上皮細胞を,正常由来どうし,病変由来どうし,正常×病変由来というように共培養し,上皮タイト結合分子や前述の分子の発現変化を検討し,シグナル伝達系を中心に解析を行う。
研究データの解析に時間を要し,実験計画に変更が生じたため。
今年度使用予定だった培養系維持のための消耗品,免疫染色,Westernblot関連試薬に充てる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 7件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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