研究課題
多施設で治療を行った唾液腺導管癌(salivary duct carcinoma; 以下SDC)症例について中央判定による病理学診断を行い、141症例を集積した。これらの症例の臨床データの解析論文を発表した(Ann Surg Oncol. 2016 Jun;23(6):2038-45)。中央判定による病理学的検討を行い診断が確実な症例だけを解析した論文としては、国際的に過去最多の症例による解析である。この結果全症例の3年全生存率は70.5%、3年無病生存率は38.2%であった。多変量解析により65歳以上、術前病期診断でN1,2が有意な独立予後不良因子であることが判明した。遠隔転移が最も多い再発部位であった。また早期癌では、顔面神経を温存した術式や、耳下腺部分切除術も可能であると考えれられ、より侵襲の少い術式による治療も可能と考えられた。当院でトラスツズマブ/ドセタキセルの新規薬物療法を施行した症例の病理組織学的効果を論文発表した(Int Canc Conf J, DOI 10.1007/s13691-016-0247-9)。本治療法による治療効果を、病理組織学的に示した初めての論文である。またSDC152例のついて免疫組織学的検討を行った結果を第39回日本頭頸部癌学会、第4回アジア頭頸部癌学会にて口演報告した。アンドロゲン受容体やCK5/6による染色状態がバイオマーカーとなることを報告した。さらに多施設で集積したSDC症例について発癌に関わる下流シグナルの免疫組織学的検索、遺伝子変異の検索を行い、p53遺伝子変異症例が予後不良であること、多形腺腫由来SDCとde novo発生SDCでは免疫組織学的性状が異なっていることを第60回日本唾液腺学会学術集会にて口演し、学術奨励賞を受賞した。
2: おおむね順調に進展している
集積した臨床情報の解析結果については論文化し報告することができた。免疫組織化科学的検索、遺伝子変異の検索も順調に行い、統計学的解析により有意と考えられるバイオマーカーを見出すことができている。
遺伝子変異の項目をさらに追加する予定である。その結果を持って、免疫組織化学的解析、遺伝子変異の解析をそれぞれ論文化を目指す。また、トラスツズマブ/ドセタキセル併用療法、および、アンドロゲン遮断療法の進行中の2つの臨床第II相試験結果の論文化を目指す。さらにこれらの新規薬物療法を施行した唾液腺癌症例について、臨床的、免疫組織学的、遺伝子変異について検討を行い、治療効果予測因子を探索する。
統計学的解析結果が得られてから、改めて免疫組織化学的検討に使用する薬品、DNAシーケンス解析スポットを検討し直す必要が生じたため、こられの薬品の購入が遅れてしまった。
抗体試薬品の購入予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件) 図書 (2件)
Ann Surg Oncol.
巻: 23 ページ: 2038-45
10.1245/s10434-015-5082-2
International Cancer Conference Journal
巻: 5 ページ: 1-4
10.1007/s13691-016-0247-9