研究課題/領域番号 |
15K10827
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
家根 旦有 近畿大学, 医学部附属病院, 教授 (40220199)
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研究分担者 |
西尾 和人 近畿大学, 医学部, 教授 (10208134)
坂井 和子 近畿大学, 医学部, 助教 (20580559)
藤井 正人 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, その他 (70129633)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中咽頭がん / HPV / バイオマーカー / ゲノム解析 / 分子標的薬 / 集学的治療 |
研究実績の概要 |
本研究は「中咽頭扁平上皮がんに対する集学的治療の効果とヒト乳頭腫ウイルス感染との相関に関する研究」(UMIN000013476)に付随する研究であり、27年度の目標は当研究に適格する中咽頭癌のサンプル収集と、HPV感染の有無を検索することを目的とした。 頭頸部癌基礎研究会の多施設共同研究に参加した20施設(近大奈良、東京医療センター、神戸大、北海道大、佐賀大、京都大、東北大、九州大、自治医大、東大、東海大、秋田大、市立三次中央、奈良医大、香川大、金沢医大、藤田保健衛生大、高知大、岐阜大)から(株)SRLを通じてサンプルを回収し、東京医療センターにすべてのサンプルを回収した。 東京医療センターにサンプルを回収した後、HPV感染の有無を検索するためにハイブリッドキャプチャーII法(HC2、高リスク型13種類のタイプを検出)、抽出したDNAをPCRで検出するHPV型判定検査(Takara Bio Inc. #6602、#6603)、p16免疫染色による組織検査を行った。サンプルの収集は平成28年3月31日を締め切りとしているため、現在もHPV感染の検査を行っている。 サンプルは約100例近く収集されたが、今後は適格症例の再検討、提出されたサンプルの評価を行い、本研究の対象となる症例の選別を行う予定である。全国の多施設からサンプルを収集し、単一の施設で検査を行うことは検査結果の精度管理および安定性において重要なことと思われる。本研究のプロトコールは近畿大学医学部において平成27年11月30日に遺伝子倫理委員会の承認を得て各参加施設に配布した。 今回の共同研究は、現在の日本の中咽頭癌のHPV感染の現況および予後を知る上で極めて重要な研究と思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
頭頸部癌基礎研究会の20施設(近大奈良、東京医療センター、神戸大、北海道大、佐賀大、京都大、東北大、九州大、自治医大、東大、東海大、秋田大、市立三次中央、奈良医大、香川大、金沢医大、藤田保健衛生大、高知大、岐阜大)が「中咽頭扁平上皮がんに対する集学的治療の効果とヒト乳頭腫ウイルス感染との相関に関する研究」(UMIN000013476)に参加の意向を示していたが、各施設で倫理委員会に通るまでの日数が掛かったことがサンプルの収集に支障を来した大きな要因であった。当初の目標症例数は213例であったが、平成28年3月31日まで収集できた症例は約100例であり、目標症例の約半数に留まった。また付随する本研究も遺伝子倫理委員会に通ったのが平成27年11月30日であり、それから各参加施設にプロトコールを配布したのが12月中旬であったことが、各施設での倫理委員会承認が遅れている原因であると考える。HPVの検出については、東京医療センターで抽出したDNAをPCRで検出し、ブラッシングで採取した検体はハイブリッドキャプチャーII法を用いてSRLで全例が検査済みである。現在は各施設から未染色のスライドを東京医療センターに送るように依頼し、免疫組織検査を行う準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、できるだけ早く参加施設で倫理委員会の承認を得て、各種のゲノム解析を開始することを目標とする。今後の研究目的としては腫瘍組織の体細胞遺伝子変異の測定を行う予定であり、具体的にはすでに腫瘍組織検体から抽出されたDNAを用いて、次世代シーケンサーによる体細胞変異解析を実施する。体細胞遺伝子の解析には、Ion AmpliSeq Cancer PanelもしくはIon AmpliSeq Comprehensive Cancer Panelを用いる予定である。また腫瘍組織の遺伝子コピー数変動の測定も行う予定であり、CGH(competitive genome hybridization )(OncoScan、Affymetrix社)による腫瘍細胞のコピー数測定を行う。体細胞変異が同定された場合には、データベースから、その変異が活性型であるか、機能喪失型であるか判断する。特定の体細胞変異が複数同定された場合、その臨床病理学的特徴および予後解析を行う。 登録症例の治療効果判定を行い、HPV感染の有無と治療効果および予後との関連、さらにセツキシマブ投与例の治療効果の差を検討する予定である。最終的には中咽頭癌の治療効果を予測する新しいバイオマーカーの開発を目的とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の本研究の目標は当研究に適格する中咽頭癌のサンプル収集と、HPV感染の有無を検索することを目的としており、実際のサンプル収集は平成28年3月31日までとした。その結果約100例近いサンプルが集まったが、予定していた213例と比べると少ないサンプル数であった。そのため27年度に予定していたサンプル収集およびサンプルからのDNA抽出、およびHPV感染の検査に必要な経費は計画していた予算に比べて少ない費用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は27年度に収集したサンプルからDNAを抽出し、次世代シーケンサーによる体細胞変異解析を実施する予定である。体細胞遺伝子の解析には、Ion AmpliSeq Cancer PanelもしくはIon AmpliSeq Comprehensive Cancer Panelを用いる予定である。また腫瘍組織の遺伝子コピー数変動の測定も行う予定であり、CGH(competitive genome hybridization )による腫瘍細胞のコピー数測定を行う。これらの研究には多額の費用を必要であると考えており、平成27年度分で生じた助成金の差額を用いる予定である。
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