研究課題/領域番号 |
15K10827
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
家根 旦有 近畿大学, 医学部附属病院, 教授 (40220199)
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研究分担者 |
西尾 和人 近畿大学, 医学部, 教授 (10208134)
坂井 和子 近畿大学, 医学部, 助教 (20580559)
藤井 正人 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 部長 (70129633)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中咽頭癌 / HPV / バイオマーカー / ゲノム解析 / 分子標的薬 / 集学的治療 |
研究実績の概要 |
本研究は「中咽頭扁平上皮がんに対する集学的治療の効果とヒト乳頭腫ウイルス感染との相関に関する研究」(UMIN000013476)に付随する研究であり、28年度の目標は多施設共同研究で集めたサンプルを、各施設において倫理委員会の承認を得た後、ゲノム解析を次世代シーケンサーを用いて行うことを目標とした。 頭頸部癌基礎研究会の多施設共同研究に参加した20施設のうち平成28年12月末までに倫理委員会の承認を得ることができた14施設(近大奈良、東京医療センター、神戸大、北海道大、佐賀大、京都大、九州大、東海大、市立三次中央、奈良医大、金沢医大、藤田保健衛生大、高知大、岐阜大)からサンプルを回収し、近畿大学医学部ゲノム生物学教室でゲノム解析を開始した。 採取されたサンプル数は85件で、その内すでに東京医療センターでHPV解析された結果はPCRによるHPV陽性は56例(65.9%)、ハイブリッドキャプチャーII法による陽性は54例(63.5%)であった。またサロゲートマーカーである16免疫染色法による陽性率は49例(57.6%)であった。回収されたサンプルから遺伝子解析の対象となった症例は80例で、PCRによるDNA検査、ハイブリッドキャプチャーII法、16免疫染色法のいずれかに陽性であった症例をHPV陽性とみなし、HPV陽性56例(70%)、HPV陰性24例(30%)を研究対象とした。 ゲノム解析の方法は次世代シーケンサーであるIonProtonシステムを用い、体細胞遺伝子の解析にはIon AmpliSeq Cancer Hotspot Panel v2を用いて行なった。現在データの解析中であるが、HPV陽性はPIK3CAの変異が多く、HPV陰性ではp53の変異が多い傾向を示したが、詳細な解析は平成29年度に行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
頭頸部癌基礎研究会の多施設共同研究に参加した20施設に、各施設で倫理委員会の承認を得るように依頼したが、平成28年12月末までに倫理委員会の承認を得ることができたのは最終的に14施設(近大奈良、東京医療センター、神戸大、北海道大、佐賀大、京都大、九州大、東海大、市立三次中央、奈良医大、金沢医大、藤田保健衛生大、高知大、岐阜大)に留まった。各施設に倫理委員会に申請するように積極的に依頼したが、倫理委員会の承認を得ることに時間が掛かり、平成28年12月末までゲノム解析を開始できなかったことが本研究の遂行が遅れた大きな原因であった。施設によっては遺伝子検査の承認を得ることが容易ではなく、倫理委員会のやりとりで平成28年12月末までに間に合わなかった施設もあった。またゲノム解析の方法は次世代シーケンサーのIonProtonシステムを用いたが、サンプル数が一定数集まった時点で検査を行うため、平成29年1月以降に検査を行った症例もあり、平成28年度以内での詳細なデータ解析ができなかったことが進捗の遅れた原因であった。また検査結果の数値データが得られたとしても、その数値の意味する内容を理解するデータ解析が容易ではないことも進捗の遅れている原因でもある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の本研究の推進方策は、平成28年度にIon AmpliSeq Cancer Hotspot Panel v2から得られたデータを解析し、その得られた数値データの意味するところを分析する。分析する目標としてはHPV感染の有無による遺伝子変化の差、放射線照射や化学療法の反応性、治療による奏効率、予後について遺伝子変化との相関について解析する。化学療法については現在標準治療となっているCDDPとセツキシマブの反応性をHPV statusによる差について検討し、反応性の違いがHPV感染による遺伝子変化の違いによるものかを検討する。HPV陽性例は放射線照射や化学療法のいずれの治療にも治療成績は良好であることから、HPV陽性例は低侵襲の治療でも従来の治療成績より劣ることはないと推測され、欧米ではHPV陽性例に対する低侵襲治療の臨床試験が現在行われている。今回次世代シーケンサーによって得られた遺伝子検査のデータと各症例の臨床情報を分析することによって、HPV陽性例の放射線量の軽減、CDDPと併用する化学放射線治療(CRT)より低侵襲と考えられているセツキシマブとの併用である放射線治療(BRT)への治療方法の変更など、低侵襲治療の可能性を探索する。これらの結果から、最終的にはHPV関連中咽頭癌の治療効果を予測する新しいバイオマーカーの開発と、頭頸部がん治療ガイドライン作成の元になるエビデンスの創出を目的とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、人件費及び旅費を別の予算から支出することが出来たため、当該研究費からの支出が低くおさえられた。また当初購入予定していた物品が納入期限に間に合わなかったこともあり次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度となるため、成果を出すために人件費及び試薬購入に使用する予定である。また、分担者の学会等旅費にも使用したい。
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