研究実績の概要 |
糖尿病黄斑浮腫は視力低下の原因となり、日本に約70万人患者がいると推計される。その病態に基づいた治療法を選択することを目指した研究をおこなった。現時点で糖尿病黄斑浮腫に対する治療として適応がみとめられているステロイド治療と抗血管内皮増殖因子(VEGF)治療を選択して行なった場合についての治療効果を検討し治療方法選択の妥当性を検討した。山形大学医学部附属病院眼科でDMEに対して局所薬物治療を施行され6ヶ月以上の経過を追えた81例90眼について後ろ向き観察研究をおこなった。山形大学医学部倫理委員会の承認を得た研究である。全例に対してステロイドレスポンダーテストを施行し6mmHg以上の眼圧上昇がないものはステロイド治療を開始、ステロイド治療で効果が十分に得られないものに関しては抗VEGF治療に切り替え治療を行なった。ステロイドレスポンダーは抗VEGF治療を行なった。治療開始後の視力・網膜厚の推移について検討した。経過観察中に点眼を含むステロイドのみで治療したものは44眼(49%)、抗VEGF治療を施行したものが46眼(51%)うち30眼がステロイドレスポンダー、16眼がステロイド治療で効果不十分なものだった。観察開始時,3,6ヶ月時点のlogMAR視力の推移は全症例で0.416,0.334,0.349と改善していた。ステロイド単独治療群で0.329,0.290,0.276、抗VEGF治療群で0.497,0.372,0.412だった。網膜厚の推移は全症例で87.4,414.0,428.3、ステロイド単独治療群で453.6, 379.3, 391.4、抗VEGF治療群で 522.5, 448.0, 466.9μmと改善していた。以上の結果より、糖尿病黄斑浮腫の病態に炎症の分子メカニズムが関与する患者が半数近く(90眼中44眼(49%))いること、このような患者にはステロイド治療を選択するのが適切とかんがえられた。ほかにVEGFが主たる関与をする患者もいることが示された。
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