研究課題/領域番号 |
15K10832
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山下 英俊 山形大学, 医学部, 教授 (90158163)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖尿病黄斑浮腫 / 炎症分子メカニズム / ステロイド治療 / 増殖糖尿病網膜症 / 硝子体手術 |
研究実績の概要 |
糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫は視力低下の原因となる。その病態に基づいた治療法を選択することを目指した研究をおこなった。糖尿病黄斑浮腫の病態は炎症の病態との類似性がある。この病態に対する治療としてステロイド薬と抗血管内皮増殖因子治療の有効性がしめされている。本研究ではステロイド薬ジフルプレドナート点眼で糖尿病黄斑浮腫治療を2009年~2015年におこなった症例66例98眼(平均年齢62.9歳)の長期予後を検討した。ジフルプレドナート点眼で糖尿病黄斑浮腫に対する薬物治療を開始後1ヶ月ごとに治療の妥当性を判断し、視力、網膜厚推移と治療後の転機について検討した。糖尿病黄斑浮腫に対して点眼薬治療を開始して、点眼のみで12ヶ月以上治療できたのものが約半数あった。長期的に視力、網膜厚の改善が得られた。今回の研究により、糖尿病黄斑浮腫の症例の約半数に病態が炎症のメカニズムによることが明らかになった。 視力低下のもう一つの原因病態である増殖糖尿病網膜症(PDR)の硝子体手術の術後4年での視力予後とその関連因子について検討した。2008年1月~2012年9月に初回硝子体手術を施行し術後4年間以上経過観察できた70例91眼(平均年齢55.1歳)を対象とした。術後4年で小数視力0.5以上と、全身因子、術前・術中・術後眼局所因子との関連を診療録ベースに後ろ向きに検討した。術後4年時視力0.5以上は48眼(52.7%)であり、これに関連する因子は、単回帰により増殖膜なし、術前高眼圧あり、網膜剥離あり、黄斑剥離あり、ガスタンポナーデ不使用、再手術施行なし、術後血管新生緑内障なしであった。術後4年時視力0.5以上に関連する因子を多変量解析により検討したところ、再手術施行なしで傾向差があった。 PDRの硝子体術後4年で視力0.5以上となる症例は、再手術を要さない病態の鎮静化が得られたものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年のテーマとして視力低下の原因となる糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫の病態について研究をおこなった。黄斑浮腫については、その病態に基づいた治療法の選択について検討した。黄斑浮腫の病態は炎症の病態との類似性がある。この病態に対する治療としてステロイド薬と抗血管内皮増殖因子治療の選択の妥当性を研究した。糖尿病黄斑浮腫に対してジフルプレドナート点眼薬治療を開始して、点眼のみで12ヶ月以上治療できたのものが約半数あった。長期的に視力、網膜厚の改善が得られた。今回の研究により、糖尿病黄斑浮腫の症例の約半数に病態が炎症のメカニズムによることが明らかになった。ステロイド点眼で効果が見られなかった症例では抗血管内皮増殖因子治療でおこない効果がみられた。糖尿病黄斑浮腫の病態の多様性が証明されたことになる。 視力低下のもう一つの原因病態である増殖糖尿病網膜症(PDR)の硝子体手術の術後4年での視力予後とその関連因子について検討した。術後4年時視力0.5以上に関連する因子としては増殖膜なし、術前高眼圧あり、網膜剥離あり、黄斑剥離あり、ガスタンポナーデ使用しなかった、再手術施行なし、術後血管新生緑内障なしがあった。増殖糖尿病網膜症の硝子体術後4年の視力には糖尿病網膜症の病態に関連することが明らかになった。ステロイド薬による病態進展への影響については今後の課題である。 以上のことより、研究は順調に推移していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究方針を示す。硝子体への病態関連細胞の解析を行う予定である。すなわち、病態関連細胞の樹状細胞が硝子体内にリクルートされる分子メカニズムを検討するため、硝子体手術の材料の分析をsure path法を用いて、細胞生物学的に硝子体細胞と樹状細胞の相互作用を検討する。さらに制御薬物の候補としてステロイド薬を臨床的に検討する。樹状細胞の硝子体へのリクルートメカニズム、炎症トリガーメカニズムのそれぞれの分子標的とその制御薬物を検討する。抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)薬の硝子体注射とステロイド眼局所注射、硝子体手術、光凝固の適切な組み合わせにより治療効果を臨床データから分析する。
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