研究課題/領域番号 |
15K10843
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
緒方 奈保子 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60204062)
|
研究分担者 |
上田 哲生 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (00364068)
車谷 典男 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (10124877)
山下 真理子 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (10645659)
西 智 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70571214)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 疫学研究 / 高齢者 / 白内障 / 認知機能 / 加齢黄斑変性 |
研究実績の概要 |
1. 藤原京EYEスタディに参加した65歳以上の高齢者に視機能関連QOL質問表(NEI VFQ-25)、白内障指摘の有無の問診、視力検査を実施した。両眼のうち矯正視力の良い方を視力とし、NEI VFQ-25の下位尺度、総合スコアと白内障及び視力の関連を検討した。NEI VFQ-25の回答は2804人、白内障群は660人(23.5 %)、白内障術後群は607人(21.7 %)、白内障なし群は1537人(54.8 %)であった。単変量線形回帰分析で白内障群は白内障なし群および白内障術後群に比べて色覚を除く全スコアが有意に低下していた(P < 0.01)。さらに白内障群は白内障術後群と比べて総合スコア、一般的見え方、目の痛み、近見視力による行動、見え方による心の健康・役割機能でスコアの低下を認めた(P < 0.01)。高齢者においては白内障が視力と独立してQOL低下と有意に関連していることがわかった。 2. 加齢黄斑変性(AMD)におけるCFHとVWF 加齢黄斑変性(AMD)に補体H因子(complement Factor H;CFH)の関与が報告されている。CFHは補体のみでなく、止血因子であるvon Willebrand因子(VWF)の機能を制御する。奈良県立医大眼科を受診した滲出型AMD群74例およびコントロール群96例それぞれ、CFH Y402HおよびV62Iの一塩基多型(SNP)を解析しELISA法により血漿VWF値を測定した。V62IのGGで有意にAMD発症頻度が高く、CFH V62IがAMD発症リスクに関与していることを確認した。さらに、血漿VWF値はAMD群で血漿VWF値が有意に高く、全身の血栓傾向の一症状としてAMDが発症している可能性があることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
藤原京EYEスタディ調査の解析が順調である。
|
今後の研究の推進方策 |
1. 白内障と認知症の関係:白内障と認知症、および認知症の前段階として軽度認知機能障害(mild cognitive impairment:MCI)が注目されている。本年度は白内障手術と認知症の関係を検討する。 認知機能検査MMSE(Mini Mental State Examination)スコア23点以下を認知症、24-26点をMCIとする。認知症群、MCI群、正常群において社会的背景、教育歴、白内障手術の有無を調べる。白内障手術の有無が認知機能に及ぼす影響を調査する。 2. AMDの発症因子の関係の研究;糖尿病や喫煙はAMDの発症リスクとされる。AMDの発症には網膜色素上皮(RPE)の障害が重要なカギとなる。糖尿病で生ずるAGEを糖尿病の負荷モデル、また喫煙で増加するHQを喫煙の負荷モデルとし、AGE、HQがRPEの細胞死や増殖に及ぼす影響とそのメカニズムを検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
解析は概ね順調であるが、白内障と認知機能のサブ解析が27年度には十分に行えていなかったため、その分の予算に余剰をきたした。また、加齢黄斑変性患者のVWFおよびCFの解析の実験費用が予定より下回った。
|
次年度使用額の使用計画 |
藤原京EYEスタディのサブ解析及びAMDの発症因子の関係の研究に使用予定。 論文掲載費用に使用予定。
|