1.黄斑局所ERGの正常値:20~80歳の正常者から黄斑局所ERGを記録し、黄斑局所ERGの全ての振幅が年齢に伴って低下することを見出した。このことは、各年代での正常値を定める必要性を示している。 2.緑内障の網膜感度と黄斑局所ERGの関係:初期から晩期までの緑内障眼と正常眼を対象とした。マイクロメリメトリー(MP-3)を用いて黄斑部の網膜感度を求めた。MP-3の測定と同部位から黄斑局所ERGを記録した。黄斑局所ERGは、直径15°の半円形の刺激スポットを中心窩の上下に位置するように記録した。MP-3で得られた網膜感度(dB)をlinear値に変換すると、網膜感度とphotopic negative response(PhNR)振幅が有意に相関した。黄斑局所ERGは緑内障患者の黄斑機能評価の一つになると考えられた。 3.黄斑円孔(MH)術後の黄斑局所ERG:MH手術の際には、MH周囲の内境界膜(ILM)を剥離する。ILMは透明な組織であるため、インドシアニングリーン(ICG)、ブリリアントブルーG(BBG)あるいはトリアムシノロンアセトニド(TA)などの染色剤が用いられている。しかし、ICGやBBGには細胞毒性があり網膜神経節細胞の障害が危惧されている。そこで、MH術後に黄斑局所ERGを記録し、ICG、BBGおよびTA群間で比較した。網膜神経節細胞の機能を反映するPhNR振幅は良好な回復を示し、3群間で有意差は認められなかった。黄斑部の染色剤は、ILMとともに除去されるため黄斑部の網膜神経節細胞の機能回復には影響しないと考えられた。 4.網膜静脈分枝閉塞(BRVO)の黄斑局所ERG:BRVOに伴った黄斑浮腫を抗VEGF療法で加療し、治療後の黄斑機能を黄斑局所ERGで評価した。非閉塞側でも網膜内層の機能が低下しており、治療によって回復することが明らかとなった。
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