自動視野計Octopus900(Haag-Streit International社)に組み込んだ0.5度間隔高密度視野測定プログラムにより正常者と緑内障症例を測定し、臨床で通常行われている6度間隔の視野測定では本来の視野異常を十分に捉えられていない事を検証した。そして、視野検査で認められる閾値変動には、測定点周囲における空間的な閾値変化の大きさが、閾値自体や網膜偏心度よりも大きく影響している事を明らかにした。 このことから、通常の視野測定における閾値変動には、測定中の固視点の動きが最も影響している事が示唆された。そこで、眼底をトラッキングし眼球運動の影響を最小限に抑えると期待できる眼底対応視野計マイクロペリメーターMP-3(株式会社ニデック)を用いて、緑内障症例で同様な高密度視野測定を行い、Octopus900によるデータと比較検討した。その結果、MP-3においても、閾値変動には空間的閾値変化が大きい暗点の縁が強く影響していたが、感度閾値19dB以上の測定点では、MP-3はOctopus900に比べて有意に閾値変動が小さく、厳密に固視を制御すれば、感度閾値が比較的良好な領域では、閾値変動を有意に減らせる事が分かった。 今回の研究により、測定点密度は視野の測定結果に大きく影響し、緑内障などの経過観察で問題となる視野検査データの変動には固視の微細な動きが大きく関与していることが明らかとなった。今後、臨床における視野検査データの信頼性を向上させ、構造と機能のより詳細な関係を明らかにしていくためには、中心視野での高密度な測定や、眼底や瞳孔などをトラッキングして固視の動きの影響を軽減することが重要なことを示すことができた。
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