研究課題/領域番号 |
15K10854
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
本庄 恵 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60399350)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高齢者緑内障 / 緑内障 / 光干渉断層計 / 視野 / 認知症 |
研究実績の概要 |
緑内障は高齢になるほど罹患率が上昇する疾患であり、日本の中途失明原因の第一位となっている。高齢者の緑内障患者は増加が続くため、緑内障による失明の予防、生涯にわたる視機能維持は非常に重要な課題である。しかし、緑内障進行の判定・診断には自覚的検査である視野検査の比重が非常に高く、高齢者では視野検査自体の施行が困難である場合が多々あるため、正確な病態の把握、進行判定が困難で苦慮する場合が多い。本研究は高齢者での緑内障診断・進行の客観的判定の補助となりうるバイオマーカーの確立を目的としている。 平成27年度は高齢緑内障患者において、機能的検査であるハンフリー視野検査による緑内障重症度の評価判定を行うと同時に、器質的検査である光干渉断層計(OCT)による評価を行った。外来における視力、眼圧、ハンフリー検査によるMD値、視野感度、OCTによる網膜厚測定を行い、臨床的緑内障重症度を評価、OCTと視野の相関について、cpRNFLTと中心30-2、10-2のMD値、黄斑部パラメータについてはNFL厚、GCC厚について、視野変化を上下にわけた上下半視野の解析に加えて、10-2のすべての検査点の網膜感度との相関を解析した。結果、高齢者においてもMD値はcpRNFLTと有意に相関しており、緑内障進行度に応じてcpRNFLTの菲薄化は顕著であった。また高齢者でも生活に非常に重要である中心視野10-2の範囲において、NFL厚、GCC厚は若年層より菲薄化が強いものの、10-2の検査点と相関がみられることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は高齢者での緑内障診断・進行の客観的判定の補助となりうるバイオマーカーの確立を目的としているが、平成27年度は高齢緑内障患者において、ハンフリー視野検査によるによる視野パラメータとOCTパラメータが高齢者においても有意に相関していることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度以降は高齢者緑内障患者と健常対照で認知機能検査を行い、軽度認知機能低下のスクリーニングを行うと同時に視野パラメータとの対応を検討する予定である。しかし、現時点までおこなったパイロットスタディにおいて、認知症の診断をうけていないような健常対照においても軽度認知機能障害がみられる高齢者が非常に多いことから、視野パラメータ検討の対象を若年層において検討することも考慮していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予備的に行った認知機能検査とMRIの結果、高齢者緑内障患者および健常対照において軽度認知障害の程度に差がなく、またMRIでの所見においても有意差が認められなかったことから、現時点ではMRI検査を前向きに施行していない。また研究成果の報告を次年度以降で行っていく予定であることから、次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降、高齢者緑内障の視野パラメータ評価対象としては若年層の緑内障患者を用いられないかどうか検討していく予定である。また、研究成果の報告を次年度以降で随時行っていく予定である。
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