研究課題
緑内障は高齢になるほど罹患率が上昇する疾患であり、日本の中途失明原因の第一位である。高齢者の緑内障患者は増加が続くため、緑内障による失明の予防、生涯の師機能維持は今後の高齢化社会に向けて、非常に重要な課題である。しかし、緑内障進行の判定・診断には自覚的検査である視野検査の比重が非常に高く、高齢者では視野検査自体の施行が困難であることがたたあるため、正確な病態の把握、進行判定が困難で苦慮する場合が多い。本研究は高齢者での緑内障診断・進行の客観的判定の補助となりうるバイオマーカーの確立を目的としている。平成28年度は高齢緑内障患者において、機能的検査であるハンフリー視野検査における信頼性基準と、認知症検査であるMMSEのスコアとの関連を検討し、器質的検査である光干渉断層計(OCT)との相関の検証を行った。認知症の診断をうけていないような高齢緑内障患者のなかに、かなりの割合で軽度認知機能低下を示す症例が存在すること、OCTと視野の相関、信頼度について、高齢緑内障患者においても相関は維持されているものの、この軽度の認知機能低下が強く関与していることが明らかになった。また、高齢者緑内障におおい落屑症候群は治療に抵抗を示し、手術加療も不成功に終わることが多い、別テーマとして術後の瘢痕形成に係る因子として生理活性脂質S1Pに注目し検討したところ、術後のS1P上昇が術後瘢痕形成に関与していることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
本研究は高齢者での緑内障診断・進行の客観的判定の補助となりうるバイオマーカーの確立を目的としているが、平成28年度は認知症進行がハンフリー視野検査とOCTパラメータの相関におよぼす影響を検討し、高齢者における軽度認知機能低下が視野とOCTの相関に関与することを明らかにすることができた。
今年度以降はさらに高齢者での軽度認知機能の緑内障検査のおよぼす影響を検討し、認知症の診断は受けていないが軽度認知機能低下がみられる高齢者に適した視野検査の改善の方向性を検討する予定である。
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Investigative Ophthalmology and Visual Science
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