研究課題/領域番号 |
15K10855
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
野田 航介 北海道大学, 医学研究科, 准教授 (90296666)
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研究分担者 |
神田 敦宏 北海道大学, 医学研究科, 特任講師 (80342707)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖尿病網膜症 / 眼細胞生物学 |
研究実績の概要 |
世界的に進行する高齢化にともない、失明疾患である糖尿病網膜症患者は今後さらに増加すると考えられている。近年、さまざまな疾患においてポリアミンとよばれる生体内物質の関与が注目されており、糖尿病の病態におけるポリアミン、そしてその代謝を担う酵素群の役割が注目されている。本研究の目的は、ポリアミン代謝酵素群の糖尿病網膜症病態における関与とその産生機序を明らかにすることにある。 前年度までの研究で、糖尿病網膜症に類似した環境下での網膜血管内皮細胞におけるポリアミン代謝酵素の発現変化の検討をおこない、低酸素条件下でポリアミンの一種であるスペルミンを酸化し、副生成物として過酸化水素およびアクロレインと呼ばれるアルデヒドを産生し細胞の酸化ストレス亢進に寄与するスペルミンオキシダーゼ(Smox)の発現が亢進することを明らかになっている。今年度はさらに網膜血管内皮細胞にスペルミンを添加すると細胞の過酸化水素生成が亢進すること、低酸素条件下ではこのスペルミン添加による過酸化水素生成の亢進が増強されることを明らかにし、さらにこの過酸化水素生成の増加がSmoxの特異的阻害剤であるMDL72527により抑制されることを見出し、網膜血管内皮細胞において、低酸素により惹起される酸化ストレスの亢進にSmoxが寄与している可能性を示した。 また、網膜血管内皮細胞とならんで糖尿病網膜症病態に重要であるミュラー細胞の糖尿病類似環境下でのポリアミン代謝酵素の発現変化の検討もおこない、低酸素刺激によりミュラー細胞においてSmoxの発現が亢進することをmRNAおよびタンパクレベルで明らかにした。更にミュラー細胞において、低酸素条件下では過酸化水素およびアクロレイン結合タンパクの産生が増加する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度以降の研究計画のうち、「各種刺激によるアクロレイン結合タンパクの発現変化」については終了し、検討により学術的意義のある結果を得ていることから、おおむね順調に研究は進展していると自己評価するものである。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度はRNA干渉や阻害剤によりポリアミン関連酵素の発現を抑制することで、アクロレイン結合タンパクや過酸化水素が減少するかを検討し、更に酸化ストレスマーカーの測定もおこなって、糖尿病網膜症病態においてポリアミン代謝酵素が果たす役割をさらに詳細に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の研究計画はポリアミン関連酵素の発現変化がみられる細胞刺激条件でのアクロレイン結合タンパクの発現変化の検討であったが、順調に研究が行われ、予定よりも低額の研究費で計画遂行が可能であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に計画している、RNA干渉や阻害剤によってポリアミン関連酵素の発現を抑制した時の、アクロレイン結合タンパクや過酸化水素、および酸化ストレスマーカーの変化の解析実験に使用する予定である。
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