本研究成果は2018年日本緑内障学会で報告した。 線維柱帯の房水流出抵抗を規定する要因の1つとして細胞外マトリクス (ECM) の発現量が知られている。しかしながら、線維柱帯における房水の流れとECM発現の関係は十分に解明されていない。前回我々は、線維柱帯細胞に水流機械刺激を負荷すると、collagens及びfibronectinの遺伝子発現が上昇することを報告した。今回、同様の実験系を用いて水流機械刺激を負荷した際のECMタンパク発現量と分解酵素であるmatrix metalloproteinase (MMP) 活性について検討した。実験系は平行平板型流れ負荷装置を用いた。細胞はヒト線維柱帯細胞(HTMC)を用いた。水流機械刺激負荷後12時間でのタンパク発現量を免疫染色法とウェスタンブロッティング法で評価した。MMP活性はゼラチンザイモグラフィーで評価した。水流機械刺激を負荷したHTMCではfibronectin、collagenの発現低下を認めた。また、培養上清ではコントロール(静置条件)と比較し、MMPの活性低下を認めた。線維柱帯では、房水の流れがECMターンオーバーに働き、房水流出抵抗と眼圧恒常性維持に関与している可能性がある。
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