研究課題
加齢黄斑変性症においては,網膜下にドルーゼンと呼ばれる異常凝集蛋白質が認められるようになる.我々は様々な年齢の患者の眼球を用いて,ドルーゼンには蛋白糖化最終産物や,生体には本来存在しないはずのD-アミノ酸含有蛋白質が集積していることを明らかにした.さらに加齢黄斑変性症だけではなく,他の黄斑疾患(黄斑円孔,黄斑前膜,黄斑浮腫)を有する患者の血液を解析した結果,活動性の高い加齢黄斑変性症の患者の血清中には,蛋白糖化最終産物やD-アミノ酸含有蛋白質に対する自己抗体が有意に高いことを見出した.このことは,加齢黄斑変性症は自己免疫反応が関与していることを示唆している.異常凝集蛋白質に対する自己免疫反応を止めるためには,異常凝集蛋白質自体を消失させるか,あるいは全身的な消炎が必要となる.我々は全身的に負荷のかからない,異常凝集蛋白質の選択的な分解法について開発を行った.ドルーゼンの構成要素の一部であるアミロイドβを凝集化させたものは,他の蛋白質と同等の吸光特性を有する.そのため,選択的な分解は難しい.そこで異常凝集蛋白質に特異的に結合して蛍光を発する色素であるチオフラビンTを用いることで,異常凝集をおこしたアミロイドβのみを選択的に分解することが可能となった.このことは,加齢黄斑変性症に対して新しい光線力学療法の開発に弾みをつけるものである.最後に,我々は加齢黄斑変性症に対する新しい画像診断装置の開発に着手している.非侵襲的に脂質・蛋白質・核酸などの生体分子の局在を明らかにすることができるラマン顕微鏡を用いて,異常凝集蛋白質に特異的なスペクトルを拾うことに成功している.現在は網膜の細胞レベルでの画像解析が可能となり,臨床応用を目指している.
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Cornea
巻: 36 ページ: S67-71
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 39967
10.1038/srep39967
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