研究実績の概要 |
加齢黄斑変性(以下AMD)は失明に至る難治性の眼疾患であり、酸化ストレスによる網膜色素上皮細胞(以下RPE)の障害が原因で発症する。酸化ストレスからRPEを保護するために、網膜に存在する生体色素(キサントフィル)が重要であると考えられている。しかしその機能や網膜内での代謝調節機構については不明な点が多い。申請者はこれまでの臨床経験と予備実験から、「キサントフィルは抗酸化作用以外にも機能を有するのではないか」また、「キサントフィルの網膜内代謝調節にはAMP活性化プロテインキナーゼ(以下AMPK)が重要な役割を果たすのではないか」との着想に至った。そこで本研究では、網膜におけるキサントフィルの新たな機能を探索し、さらに網膜内代謝調節におけるAMPKの役割を明らかにし、AMDに対する効果的な予防法開発の基盤となる研究を行う。昨年までに、網膜色素上皮細胞におけるキサントフィルの取り込み量を定量化する方法を確立した。また、3種の網膜色素上皮細胞(ARPE-19,初代培養RPE,iPS由来RPE)、そして網膜を構成するグリア細胞の一つであるミュラー細胞株(MIO-M1)について、同様の方法でキサントフィルの取り込み量の定量化が可能であるかどうかを検討した。本年度は、キサントフィルの定量化の検討を進めつつ、キサントフィルが、網膜を構成する細胞の機能に及ぼす影響について、特に細胞遊走に及ぼす影響について検討した。
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