研究課題/領域番号 |
15K10869
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
柳井 亮二 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (10346554)
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研究分担者 |
園田 康平 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10294943)
佐古田 幸美 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30629754)
折田 朋子 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50467792)
木村 和博 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60335255)
寺西 慎一郎 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90649360)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 眼炎症 / 加齢黄斑変性症 / ぶどう膜炎 / オメガ3脂肪酸 / チトクロームP |
研究実績の概要 |
ω-3脂肪酸由来のCYP代謝産物による脈絡膜血管新生(CNV),実験的自己免疫性ぶどう膜炎モデル(EAU)の慢性炎症抑制効果を検証した。具体的には17,18-epoxyeicosatetraenoic acid [EEQ], および19,20-epoxydocosapentaenoic acid [EDP]をEAUモデル(マウス足底部皮内に網膜抗原(IRBP)を免疫して作成)に腹腔内投与し,眼内炎症の程度をEAU臨床スコア,眼球の眼炎症組織スコアで確認した。臨床スコアでは17,18-EEQを投与したマウスがω-6脂肪酸由来のCYP代謝産物14,15-EETを摂取したマウスよりも有意に低く,19,20-EDPを投与したマウスは抗炎症効果はみられなかった。 組織学的スコアにおいても17,18-EEQを投与したマウスが有意にスコアが低かった。
ω-3脂肪酸の抗炎症作用におけるマクロファージをはじめとした抗原提示細胞(antigen presenting cell; APC)の関与について検討した。ω-3脂肪酸あるいは対照の食餌摂取21日後のマウスの脾臓から採取しマイトマイシン処理を行ったAPCと、EAU誘導12日後のマウスのリンパ節から採取し磁気細胞分離したCD4陽性T細胞とをIRBP下に72時間共培養させた。評価はELISA法による炎症性サイトカインの測定、3H-チミジン取込み法によるT細胞増殖能の評価を行った。ω-3脂肪酸摂取群ではω-6脂肪酸摂取群と比較して3H-チミジン取込みとIL-17産生が有意に低下した。IFN-γの産生は各群で有意な差がみられなかった。ω-3脂肪酸摂取による眼炎症抑制効果として、マクロファージを介した免疫制御機構におけるTh17経路の抑制が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ω-3脂肪酸由来のCYP代謝産物による脈絡膜血管新生(CNV),実験的自己免疫性ぶどう膜炎モデル(EAU)の慢性炎症抑制効果を検証するために,繰り返し実験を行ったため,予定よりも実験計画が遅れてしまった。実験結果の再現性などについて確実なものとするため,初年度は特に時間をかけてコアとなるデータの作成を行った。次年度以降はこのデータを元に研究を発展させる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これらの眼炎症効果のメカニズムを探索するために,アラーミンシグナルの解析,マクロファージ活性化およびT細胞分化の機序の解析を行う予定である。 Bioplexシステム(Bio-Rad)を用いて炎症性サイトカイン,ケモカインおよび接着分子の発現の程度をスクリーニングする。この結果から得られたデータを元に,網膜および脈絡膜からmRNAおよびタンパク質を回収し,標的となる接着分子の発現の程度をReal-time PCRおよびウェスタンブロット法を用いて確認する。さらに摘出した眼球はOCTコンパウンドに包埋し,凍結切片を作成する。レーザーマイクロダイセクションによってCNV領域を切除し,RNAを抽出する。Real-time PCRを用いてIL-1b,IL-6,IL-8, TNF-aなどのサイトカイン,ICAM-1, VCAM-1, Selectinファミリーなどの接着分子およびVEGF, IGF-1, FGF, PIGFなどの血管新生関連因子の発現を比較検討する。
マクロファージはT細胞の生産するサイトカインにより活性化され,T細胞はTh1,Th2,TFH,Th17,Treg細胞などの特異的な機能を持ったT細胞へと分化していくが,これらの相互作用ならびに制御機構と分化判定は複雑である。この複雑なネットワークを解明するため,タンパクビーズアレイシステムでマクロファージ活性化およびT細胞分化誘導因子を網羅的に解析する。Th1サイトカイン(IFNγ, TNFα, IL-2, IL-12)およびTh2サイトカイン(L-4,IL-10,IL-1β),HMGB-1,IL-27ならびに各受容体の相互解析も行う。IL-17とそのT細胞制御機構が慢性炎症の新たな治療のターゲットとなる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
ω-3脂肪酸由来のCYP代謝産物による脈絡膜血管新生(CNV),実験的自己免疫性ぶどう膜炎モデル(EAU)の慢性炎症抑制効果を検証するために,繰り返し実験を行ったため,予定よりも実験計画が遅れてしまった。実験結果の再現性などについて確実なものとするため,初年度は特に時間をかけてコアとなるデータの作成を行った。次年度以降はこのデータを元に研究を発展させる予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
この未使用額については,平成28年度の研究費とあわせて,Bioplexシステム(Bio-Rad),アラーミン(HMGB-1, IL-1α, S100proteins,AGEs, ATP, oxidized adducts など)発現のELISA 法の検討に用いる消耗品の購入に充てる。
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