研究課題/領域番号 |
15K10871
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
北岡 隆 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80234235)
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研究分担者 |
築城 英子 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (30363493)
木下 博文 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (50530466)
松本 牧子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (70437903)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コハク酸 / 血管内皮増殖因子 / 網膜 / 毛様体 / 血管新生 / 細胞生存シグナル / 細胞死シグナル / 網膜血流 |
研究実績の概要 |
抗血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor: VEGF)薬は眼内血管新生治療のみならず全身のガン治療にも使用され大きな成果を上げてきている。抗VEGF治療により眼内の血管新生疾患は根治が期待できるかに見えた。 しかし限界も指摘されてきており、抗VEGF治療では治療の効果が減弱してきたり、あまり効果が見込めない症例も存在することがわかってきた。そのためVEGF以外の新たな治療対象の展開が期待される。 我々はコハク酸が網膜血管新生に関与するという論文の報告を参考に増殖糖尿病網膜症の硝子体中のコハク酸濃度を測定した。その結果重症度に応じてコハク酸が増加していることを検証した。このコハク酸の関与はVEGFと独立である可能性も示唆した。さらに細胞を進展する実験系から高血圧モデルでは細胞内のコハク酸濃度が増加していることを見出した。 これを受けコハク酸が眼科領域における血管新生疾患において治療の対象となるかどうかを検討する価値があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在抗VEGF薬は糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症などの血管新生疾患の治療に広く使用されている。しかしながらその限界も指摘されてきており、VEGF以外の治療対象の展開が期待される。この対象の中ではPlGFが有望視され、抗VEGF効果に加え抗PlGF効果の加わった治験も開始されたがうまくいっていないのが実情である。 そんな中、上述のごとく、網膜血管新生へのコハク酸の関与を示す論文が報告され、それを受けて増殖糖尿病網膜症の硝子体中でコハク酸濃度が増加していることや、高血圧モデルで細胞内コハク酸濃度が増加していることを報告してきた。 しかし糖尿病での血管新生では、網膜だけでなく毛様体での血管新生も重要であり、その実験系としてiPS細胞からの毛様体の誘導を行った。iPS細胞からの眼胞を切り出しその最周辺部を観察したところ、アクアポリンを産生している部分があり、この部分は水を輸送していることが確認され、毛様体に当たることを確認した。 現在この誘導毛様体に低酸素負荷や高血圧のモデルである細胞の進展実験を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病網膜症は失明する危険性のある重要な疾患であるが、その失明にも様々な場合が考えられる。 1つには虚血が挙げられる。この虚血網膜からのVEGFが血管新生の原因となり、出血が助長されそれが線維化を起こし失明に至る。このために抗VEGF治療が行われるが、虚血そのものを防げるわけではない。この虚血を防ぐ方策が必要になる。虚血には高血圧が関与することが考えられ、そのため細胞の進展実験を行い、高血圧のモデルを作ることででてくるサイトカインを調べ、各々が虚血とどう関係するか検討する。 もう一つは血管新生が原因となる緑内障である。これには毛様体機能が大いに関係し、抗VEGF治療を積極的に推進する必要がある。その一方で緑内障後に艇が夏をきたす場合があり、毛様体機能をiPS細胞で補う必要があり、誘導した毛様体をこのために使用することも検討中である。 また網膜剥離では直接のVEGFの関与はないが、網膜血流の低下が術後視機能に影響する可能性が指摘されている。網膜剥離についても視機能を調VEGFの関与を調べる予定である。
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