研究課題
近年網膜疾患における脈絡膜の関与に注目が集まっている。脈絡膜は、生体で極性を示す網膜色素上皮とのインターラクションを考える上では非常に重要な部位であり、また網膜干渉断層計の進歩によって、生体での脈絡膜の評価の精度が上がり、この点に注目して、臨床研究を行った。昨年同様に、独自に開発した脈絡膜構造解析ソフトを用いることで、弱視眼と遠視眼との脈絡膜構造の違いから、弱視眼に脈絡膜間質組織の幼弱性の可能性や運動における脈絡膜の構造変化など正常眼におけるデータの蓄積を継続できた。また、疾患眼においては、前述の方法によって初めて取得可能な、脈絡膜管腔間質比が、原田病における治療の予後因子の可能性がある事などを解明した。また、新たに脈絡膜構造解析ソフトに、脈絡膜の脈絡膜毛細管板、satller's layer、Haller's layerのそれぞれの血管を基にした、脈絡膜の層別の構造解析を可能とする機能を付加した。脈絡膜層別解析を行うことで、中心性漿液性脈絡網膜症における、脈絡膜内層と外層との構造変化が病期によって異なる事を見いだし、層別解析がさらなる詳細な脈絡膜病態解明に重要である事を示唆できた。イメージングの手法を用いて、臨床症例から網膜色素上皮と脈絡膜との関係の解明を続けることで、加齢黄斑変性などの抗VEGF治療薬における効果予測などを視野に現在研究を行っている。また、基礎研究として、極性網膜色素上皮細胞を使った研究では、現在臨床で用いられる、血管内皮増殖因子抗体の網膜色素上皮における透過性を検証し、アフリベルセプトが最も透過性が高く、また脈絡膜側の血管内皮増殖因子の抑制効果を強くみとめるという結果を見いだした。
3: やや遅れている
イメージングによる脈絡膜の構造解析について、多くの結果を得ることができ、論文発表を行う事ができた。脈絡膜層別解析を可能とする、独自の2階調化解析ソフトも完成し、解析の効率が飛躍的に向上したことで今後のさらなる進展が期待できる点。極性をもつ網膜色素上皮細胞を用いて、薬剤透過性モデルの確立に成功して、薬剤の生体における動態モデルを確立出来たが、その後のサイトカイン研究、マイクロアレイ等が現在条件設定に時間を要しており、その点が問題となっている。
脈絡膜構造解析自動化ソフトを用いて、より多くの疾患についての解析を進める。また、イメージングの観点からは、OCTのC-scan像を用いて、さらに広範囲の脈絡膜構造解析を進める予定である。またヒト極性網膜色素上皮細胞を用いて、加齢黄斑変性などの疑似状態を、TNFなどで刺激を行う事で作成し、その場合のVEGF分泌能や分布の変化を調べる事で、加齢黄斑変性につながる初期変化の解明につなげる。同時に同刺激時のDNAマイクロアレイ等による解析について、本年度にこれに取り組む予定である。
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