研究課題
フックス角膜内皮ジストロフィ(FECD)においてTCF4遺伝子の第3イントロンにおいて50回以上のTGCの反復配列の伸長が認められることが近年報告された。本研究ではTGCを100回反復した塩基配列を作成して、正常者由来の角膜より培養した角膜内皮細胞に、CRISPRによりノックインすることでモデル細胞の作成を進めた。概ね順調に進んでいるが、確実な樹立は次年度以降になる予定である。Erlangen大学(ドイツ)で、手術時に採取したFECD患者角膜内皮におけるTCF4遺伝子の発現解析を行った。TCF4遺伝子の発現量をリアルタイムPCR法により評価し、TGCの反復配列の伸長との相関関係についての解析を行った。また、400名を超える患者より血液を採取して、血液由来のゲノムDNAを抽出し、TCF4の第3イントロンにおけるTGCの反復配列の伸長の有無について検討した。これまでに複数のトリプレットリピート病において、リピートの伸長と当該の遺伝子発現の低下あるいは上昇が報告されている。そこで、TCF4が反復配列の伸長の影響によりスプライシングバリアントに影響があるのか否かについても検討を行った。現在までの解析においてはTCF4の第3イントロンにおけるTGCの反復配列の伸長回数と角膜内皮におけるTCF4遺伝子の発現量は弱い正の相関を示した。今後、より多くの患者での解析を続けることで、より正確な結果を得る予定である。また、上述の遺伝子改変を行ったモデル細胞においても、伸長回数が遺伝子発現に与える影響について検討する。
2: おおむね順調に進展している
研究計画書にそって研究を進めており、申請時に計画した内容に沿って研究が進められている。
現在進めている、TGCを100回反復した塩基配列を作成してCRISPRによりノックインすることによるモデル細胞の作成をさらに推進する。長い繰り返し配列のノックインは当初の予測より実験上の困難を伴ったが、着実に技術的問題点を克服しつつあり、早期の樹立を目指す。また、TCF4遺伝子におけるTGC反復配列がTCF4以外の遺伝子の発現に影響している可能性も否定できないために、計画通りにTGC反復配列の伸長をノックインしたモデル細胞を用いて、DNAマイクロアレイにより網羅的に遺伝子発現を解析する。TGC反復配列の伸長を有する角膜内皮細胞モデルの機能や表現形の評価についても進める予定である。
不要な物品の購入を可能な限り減らし、効率的に研究を進めることができたため。研究室に備わっている備品、その他の研究費で既に取得済みの消案品を使用することも可能であった。
次年度は遺伝子編集の実験を多く予定しているために、遺伝子実験に十分な費用が必要であるために、次年度使用額は これらの目的に用いる予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 7件、 招待講演 6件) 図書 (2件)
Invest Ophthalmol Vis Sci
巻: 57(3) ページ: 1284-1292
doi:10.1167/iovs.15-18586
巻: 56(5) ページ: 2933-2942
67/iovs.14-15163
巻: 56(8) ページ: 4865-4869
10.1167
Laboratory Investigation
巻: 95 ページ: 1291-1304
10.1038/labinvest.2015.111
PLos One
巻: 10(9) ページ: e0136802
10.1371
巻: 56(10) ページ: 6067-6074
Sci Rep
巻: 5 ページ: 15005
10.1038/srep15005
巻: 56(12) ページ: 7560-7567
10.1167/iovs.15-17887.