研究実績の概要 |
GABAA受容体作用型NS(Allopregnanolone, AlloP)とNMDA受容体作用型NS (24S-Hydroxycholesterol, 24SH) について,正常ラット分離加圧標本をもちいたex vivo加圧実験を行い,以下①~③の検討を行ない,「神経ステロイドは神経伝達物質受容体を介して緑内障性視神経症の発症を防御する」ことを検証した。①眼圧上昇時,各NSが網膜に発現することを確認する。②GABAA受容体作用型NSは,加圧負荷時に神経保護性に作用するか否かを明らかにする。③NMDA受容体作用型NSは,加圧負荷時に神経傷害性に作用するか否かを明らかにする。 1. 正常ラット分離加圧標本の作成 正常ラットを用いて,眼球分離標本を作成する。加圧実験は,眼球分離標本を独自に開発した閉鎖型加圧実験装置を用いて30℃,24時間加圧した。 2.加圧によって網膜内に発現するNS量の測定 加圧負荷によって網膜内に発現するAlloPと24SHの量を,ELISA,蛍光免疫組織染色法,液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析計(LC/MS/MS)で調査した結果,網膜内のAlloPと24SHの発現量は,加圧によって圧依存性に増加することが明らかになった。 3.加圧負荷時のNSの作用の検討 加圧負荷時のNSの作用が,神経傷害性か,神経保護性か明らかにする為に,培養液中にAlloPと24SHを添加して加圧した結果,AlloPと24SHは加圧障害に対して神経保護的に作用することが明らかとなった。一方,培養液中に各NSの合成阻害薬を投与して加圧すると,組織傷害が誘導された。グルタミン酸受容体に対する拮抗薬をNS合成阻害薬とともに培養液中に投与して加圧すると,神経傷害が抑制されたため,グルタミン酸興奮毒性の関与が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
科学研究費によって助成いただいている本研究は概ね順調に進んでおり,これまでの研究結果を以下の2論文として発表することができた。 Ishikawa, M., Yoshitomi ,T, Zorumski, C.F., Izumi, Y. 24(S)-Hydroxycholesterol protects the ex vivo rat retina from injury by elevated hydrostatic pressure. Sci Reports 6:3388, 2016. Ishikawa, M., Yoshitomi, T, Covey, D.F., Zorumski, C.F., Izumi, Y. The synthetic enantiomer of allopregnanolone effectively protects the ex vivo rat retina from injury by elevated hydrostatic pressure. Neuropharmacology 2016 in press. I 来年度の研究も予定通り計画できる見込みである。
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