研究課題/領域番号 |
15K10889
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
諸星 計 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60598415)
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研究分担者 |
大野 京子 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30262174)
森田 育男 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60100129)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 加齢黄斑変性 / 自己免疫 / バイオマーカー / 脈絡膜新生血管 / 自己抗体 |
研究実績の概要 |
加齢黄斑変性(AMD)は脈絡膜新生血管(CNV)からの滲出液や出血により、黄斑部網膜が不可逆的障害を受け視力低下をきたす疾患であり、その病態には自己抗体による局所炎症の関与が示唆されている。 我々は、マススペクトル解析・アンチゲンマイクロアレイ法により、pyruvate kinase M2(PKM2)やaldolase Cといった代謝酵素に対する自己抗体を患者血清中に同定し、さらに患者由来IgGがピルビン酸キナーゼの酵素活性を濃度依存性に阻害することを確認した。つぎに患者血清中の抗PKM2 IgG抗体はAMDの病態を促進するのか抑制するのかを検討するため、PKM2の阻害剤とPKM2の中和抗体を用いて、tBHによる酸化ストレス下における網膜色素上皮細胞(ARPE19)のVEGF産生能を測定したところ、ピルビン酸キナーゼ阻害によるVEGFの産生低下が確認された。以上より、患者血清由来IgG抗体、なかでもPKM2に対する抗体はCNVに対し抑制的に作用している可能性が示唆された。 また、患者血清のほか、より病態に直接的に作用していると思われる眼局所のサンプルとして前房水を採取し、自己抗体プロファイルの解明を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であるAMD患者における新規自己抗体の同定は順調に進んでいるが、AMD患者血清を前視方的解析し、抗体価による予後診断の有用性の評価はまだ行えていない。しかしながら、in vitroでのPKM2をターゲットとした研究は研究計画を先行しており、全体としてはおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
上記研究結果の中から、AMDの病態に深く関与していると考えられる抗原をマウスに免疫することによる、新たな実験的自己免疫性AMDマウスモデルを構築し、同モデルを用いた病態の解明と、抗原・抗体特異的な新規治療法の探索を行う。同時に、その自己抗体がAMD発症に直接的に関与しているのか、病態の進行過程に生じた二次的産物であるのかという点について考察する。 上記手法にてAMDに類似した病態が誘導されない場合、その抗原に対する自己抗体はAMD発症には関与しておらず、病態の進行に伴い生じた二次的産物に過ぎないとも考えられる一方、AMDの発症ではなく増悪のメカニズムに深く関与している可能性も考えられる。そこで、既にAMDに類似した病態を呈しているマウスを使用することで、病態増悪過程における自己抗体の関与を検討できると考えられる。具体的には、dry 型AMDモデルとしてCcl2(-/-)/Cx3cr1(-/-)マウス、血液網膜柵の破綻したwet型AMDモデルとしてlaser induced CNVを生じたマウスを使用する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究所内の共有資源を使用することができたため予定使用額よりも経費を節約できた。また、AMD患者のリクルート数が予定より少なかったため、抗体価測定に使用する予定であった費用が使用されなかったため、本年度使用額が予定使用額を下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、おもにAMD患者血清中抗体価測定のために使用し、その他はマイクロアレイ解析用抗原の購入、マウスを用いた動物モデル解析における免疫組織学的検査試薬や、免疫抗原の購入に対し使用する予定である。
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