研究課題/領域番号 |
15K10890
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
菊池 孝信 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (50177797)
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研究分担者 |
太田 浩一 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70262730)
宮原 照良 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (80362135)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自己免疫網膜症 / 癌関連網膜症 |
研究実績の概要 |
本研究計画の目的は、自己免疫網膜症患者血清が認識する網膜特異抗原タンパク質をプロテオーム解析法により網羅的に同定し、その発症機構を分子レベルで解明することにある。また、同定された抗原タンパク質をバイオマーカーとしての有用性を検討し、新しい診断法の開発を目指すことにある。 ヒト抗原遺伝子のcDNAクローニングと大腸菌発現組換えタンパク質による抗原タンパクの同定を行った。プロテオーム解析により推定された抗原タンパク質について、ヒト網膜由来のRNAから調整されたMarathon-Ready cDNA(クロンテック社)を用いて抗原タンパクの全翻訳領域を含むcDNA断片をPCR法により増幅し、大腸菌発現ベクターに挿入し、ヒト由来の網膜特異抗原タンパクを大腸菌に産生させた。この組換えタンパクをHis-Tagアフィニティカラムを用いて精製し、ウエスタンブロットの試料とした。本年度は、新たに視細胞以外の細胞で特異的に発現している2種類の抗原タンパク質を見出し、クローニングおよび組換え蛋白の調整を行っている。現在までに、既知の抗原タンパクを含め12個の抗原タンパク質をクローニングした。平成27年度から新たに16例の患者血清が集められ、97例以上の患者血清についてこれらの抗原タンパク質との反応性を検討した。複数の患者血清が認識する6種類の抗原蛋白(既知の抗原を含め)を見出し、エピトープ解析のために、抗原タンパクの欠失変異体を作製している。エピトープ領域を狭めることができた抗原タンパクについては合成ペプチドを用いて、エピトープの詳細な解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、12個の網膜抗原タンパクをクローニングすることが出来、ほぼ順調に研究を進めることができた。また、本年度新たにクローニングした抗原タンパクは分子量が80kDa以上の大きなタンパクであったため、従来の発現ベクターでの蛋白発現が得られなかったので、種々の発現ベクター系を試し、大量産生系を確立することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに90例以上の患者血清についてウエスタンブロット法、免疫染色法およびOCTによる検討を行って来た。そのなかで、錐体細胞、色素上皮細胞、ミューラー細胞や双極細胞などで特異的に発現している抗原を認識する血清を見いだしている。このような抗原タンパク質の同定は未だ成されていない。プロテオーム解析により特異的な抗原タンパク質の同定を進める。また、新たに同定された抗原タンパクについて、エピトープの探索およびそのエピト―プを含む合成ペプチドによるELISA法を確立し、抗体価と病態の進行度との比較検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、抗体を購入予定であったが、他の試薬等の高騰により購入できなかったので、基金の残額を次年度に繰り越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度請求額と合わせて以下のように使用する。 (1)患者血清が認識する網膜特異抗原の網羅的プロテオーム解析を行うため、プロテオーム解析用酵素およびLC-MS用試薬・分析カラム等の経費として200,000円ほど使用する。(2)抗原タンパクの組換え欠失変異体の作製とエピトープの検索のため、変異体蛋白によりエピトープ領域を狭め、合成ペプチドによってエピトープを決定する。ペプチド受託合成のための経費として400,000円ほど使用する。
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