研究実績の概要 |
本研究計画の目的は、自己免疫網膜症患者血清が認識する網膜特異抗原タンパク質をプロテオーム解析法により網羅的に同定し、その発症機構を分子レベルで解明することにある。また、同定された抗原タンパク質に対する患者血清中の抗体価の変動と病態変化について検討し、バイオマーカーとしての有用性を検証するとともに、新しい診断法の開発を目指すことにある。 ヒト抗原遺伝子のcDNAクローニングと大腸菌発現組換えタンパク質による抗原タンパクの同定を行った。プロテオーム解析により推定された抗原タンパク質について、ヒト網膜由来のRNAから調整されたMarathon-Ready cDNA(クロンテック社)を用いて抗原タンパクの全翻訳領域を含むcDNA断片をPCR法により増幅し、大腸菌発現ベクターに挿入し、ヒト由来の網膜特異抗原タンパクを大腸菌に産生させた。この組換えタンパクをHis-Tagアフィニティカラムを用いて精製し、ウエスタンブロットの試料とした。新たに視細胞以外の細胞で特異的に発現している3種類の抗原タンパク質を見出し、クローニングおよび組換え蛋白の調整を行っている。現在までに、既知の抗原タンパクを含め13個の抗原タンパク質をクローニングした。平成27年度から新たに24例の患者血清が集められ、105例以上の患者血清についてこれらの抗原タンパク質との反応性を検討した。複数の患者血清が認識する6種類の抗原蛋白(既知の抗原を含め)を見出し、エピトープ解析のために、抗原タンパクの欠失変異体を作製している。1例ではあるが、特定の抗原タンパク質に対する異常に高い抗体価(32,000倍希釈)を示し、生命予後の悪い症例が見られた。通常、癌関連網膜症では生命予後は比確的緩やかであることが知られており、抗体価と生命予後の関係について精査する予定である。
|