研究課題/領域番号 |
15K10902
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
羽藤 晋 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師 (70327542)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 角膜内皮細胞 / iPS細胞 / 免疫寛容 / 制御性T細胞 |
研究実績の概要 |
まずiPS細胞由来角膜内皮細胞を用いた本試験に先立ち、ヒト角膜内皮細胞のcell lineであるHCE細胞を用いての免疫特性の検証を行い、実験系を確立した。HCE細胞とCD8+T細胞との共培養において、BrdU in vitro assay を行ったところ、T細胞の増殖抑制が確認された。また、HCE細胞とpan-T細胞との共培養を行い、フローサイトメトリーで制御性T細胞のマーカーであるCD25とFoxp3の発現量を調べたところ、これらの発現量の増加を認めたことから、ヒト角膜内皮細胞での免疫特性が予想通り確認されるとともに、実験系の確立も達成された。 並行して、iPS細胞株201B7およびFFI-01株から、角膜内皮細胞へのin vitro分化誘導を行った。iPS細胞からemblyonal body cultureを経て接着培養にて神経堤細胞へ誘導し、さらに継代・接着培養にて角膜内皮様の細胞を得た。この角膜内皮様細胞はZO-1, Na,K-ATPase, PITX2, N-cadherin等の角膜内皮細胞に必須のマーカーをすべて発現していた。 さらに、得られたiPS由来角膜内皮様細胞は、RT-PCRおよびELISAにて、制御性T細胞誘導に必要なTGF betaを発現していることが確認できた。 しかし、iPS由来角膜内皮様細胞とT細胞との共培養実験に進んだところ、iPS由来角膜内皮様細胞が培養フラスコ底から剥離してしまい検証ができないという問題点が生じた。おそらく不死化したヒト角膜内皮細胞と異なり、iPS由来角膜内皮様細胞ではそこまでフラスコ底への接着が強固でないと思われる。今後はフラスコにlaminin等の細胞外器質をコーティングする等でiPS由来角膜内皮様細胞とT細胞との共培養が行える様に対策を講じる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
iPS細胞から角膜内皮様細胞への誘導は再現性をもって達成できており、この細胞がTGF betaを発現していることもELISAで確認できている。また、不死化したヒト角膜内皮細胞株での実験系の検証も達成できている。 今後はT細胞とiPS由来角膜内皮様細胞との共培養実験だが、前述のとおりT細胞との共培養下においてiPS由来角膜内皮様細胞の培養フラスコ底からの剥離という予想外の現象を確認したため、対策を講じる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
iPS由来角膜内皮様細胞の接着培養において、ラミニン等の細胞外器質のコーティングにより、フラスコ底からの剥離を防ぐことで、T細胞との共培養実験を行えるようにする。共培養が可能になれば、当初の予定どおり、T細胞の細胞増殖をBrdU in vitro assayで評価して、細胞増殖が抑制されているか調べる。また、フローサイトメトリーで制御性T細胞のマーカーであるCD25とFoxp3の発現量を調べる。 また、iPS由来角膜内皮様細胞におけるFas ligandやPD-L1の発現を免疫染色にて検証し、T細胞へのアポトーシス誘導能があるかどうかを検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
iPS細胞由来角膜内皮様細胞とT細胞との共培養実験において、角膜内皮様細胞の培養フラスコ底からの剥離という予想外の事態を確認し、その原因検索と対策の検討のため、実験のペースがややスローダウンした。
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次年度使用額の使用計画 |
余剰分を次年度使用額に回して、その分を用いて共培養実験が行えるような培養条件の検証を行う。具体的には、ラミニンやコラーゲン等の細胞外器質のコーティングを行うことで細胞を剥離しにくくした上で、細胞のphenotypeが大きく異ならないか確認し、そのうえで共培養実験に進む予定である。
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