研究実績の概要 |
平成28年度は、前房水サイトカインの測定を240眼で行った。その結果、水疱性角膜症を発症している症例だけでなく、角膜内皮細胞が減少している症例においても、IL-1α、IL-8、IL-17A、TNF-α、GM-CSF、MIP-1α、IFN-γ、 E-selectinの濃度が上昇していることが分かった(Yamaguchi T, et al. IOVS 2016)。さらに、角膜内皮細胞密度がある種のサイトカイン濃度と有意に相関することがわかった(Yaguchi Y, Yamaguchi T et al. Scientific Reports under revision)。また、興味深いことに、前房水サイトカイン濃度は虹彩損傷の重症度と相関することがわかった(Aketa N, Yamaguchi T et al. IOVS in press)。また、重症度眼表面疾患であるスティーブンスジョンソン症候群などで、前房水サイトカイン濃度が非常に高くこれが若年性の併発白内障や緑内障の発症に寄与していることが示唆された(Aketa N, Yamaguchi T et al. Under review)。さらに、仮説していた通り、角膜移植後の角膜内皮細胞密度と術前前房水IL-10, IL-12p70、IFN-γ、MCP-1濃度が相関することがわかった(Yaguchi Y, Yamaguchi T, et al. AJO under revision)。これらの仕事を通じて、角膜移植後の失明の最も多い角膜内皮細胞の減少に術前からの前房内環境が大きく関与することが証明された。平成29年には、長期の角膜内皮細胞密度への影響と角膜移植後の拒絶反応に関与する因子を前房内サイトカインの視点から、トランスレーショナルな観点から研究を全力で推進する予定である。
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