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2016 年度 実施状況報告書

特発性黄斑上膜の発症機序に関する基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K10910
研究機関大阪医科大学

研究代表者

池田 恒彦  大阪医科大学, 医学部, 教授 (70222891)

研究分担者 奥 英弘  大阪医科大学, 医学部, 准教授 (90177163)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード黄斑上膜 / 黄斑円孔 / セリンプロテアーゼ / トリプターゼ / キマーゼ / 抗2型コラーゲン抗体 / ニューロステロイド / 免疫染色
研究実績の概要

特発性黄斑上膜は日常臨床でしばしば遭遇する疾患である。現時点では有効な薬物療法はなく,硝子体手術が唯一の確実な治療である。本疾患の発症機序としては,後部硝子体皮質前ポケットの後壁に残存した硝子体を足場に細胞増殖や細胞外基質が蓄積するために生じるとされているが,未だに不明な点も多い。我々は,以前から黄斑部に幹細胞様の未分化な細胞が存在し,それが種々の黄斑疾患の病態に関与する可能性を考え研究を行なってきた。
また,キマーゼやトリプターゼの硝子体内での活性が上昇していることを過去に報告した。キマーゼやトリプターゼなどのセリンプロテアーゼは肥満細胞で産生されるが,近年,肥満細胞が組織の線維化や血管新生,アポトーシスに関与することが注目されている。肥満細胞は眼球では脈絡膜,毛様体,結膜,強膜などに存在することが報告されている。硝子体中のキマーゼやトリプターゼが眼内のどの組織から産生されるのか現時点では不明であるが,脈絡膜や毛様体などのぶどう膜組織がその候補として考えられる。
また,bursa premacularisは黄斑円孔や黄斑上膜の発症に関与することは過去に報告されているが,これがどのような生理作用も持つ組織なのかは解明されていない。我々はbursa premacularisが, 黄斑上膜や黄斑円孔など種々の黄斑疾患の発症機序に関与する可能性を考えているが, この部位に存在するヒアロサイトと肥満細胞の関連についても検討を行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

網膜硝子体疾患における硝子体と血清中トリプターゼ活性について以下の臨床研究を行った。
【目的】我々は肥満細胞が産生するセリンプロテアーゼの一つであるトリプターゼの硝子体中活性が特発性黄斑上膜(ERM)で高いことを報告した(Ikeda T et al:Clinical Ophthalmol 2015)。今回, トリプターゼ産生の局在を知る目的で, 網膜硝子体4疾患における硝子体および血清中トリプターゼ活性の測定を行い比較検討した。
【方法】対象疾患の内訳はERM, 特発性黄斑円孔(MH), 増殖糖尿病網膜症(PDR), 裂孔原性網膜剥離(RD)各々20例である。各々の症例で硝子体手術時に採取した硝子体サンプルおよび血清におけるトリプターゼ活性をELISA法で測定した。
【結果】硝子体のトリプターゼ活性(unit/ml)はERM:0.019±0.011, MH:0.018±0.009, PDR:0.011±0.003, RD:0.016±0.012で, ERM,MH,RDはPDRに比較して有意に高値であった。 血清のトリプターゼ活性はERM:2.390±0.736, MH:2.665±0.736, PDR:2.664±0.738, RD:2.719±0.760で,4疾患の間に有意差はなかった。
【結論】ERM,MH,RDはPDRに比較して硝子体中トリプターゼ活性が有意に高値であったが,血清中では差が認められなかったことより, 硝子体中トリプターゼは眼内で産生されている可能性が示唆された。

今後の研究の推進方策

【性ホルモンとセリンプロテアーゼの関連の検討】エストロゲンなどの性ホルモンが肥満細胞におけるセリンプロテアーゼの産生を亢進させるといった報告があるので,患者の血清中および硝子体中のエストロゲン,プロゲステロン,アンドロゲンなどの性ホルモンを測定し,血中よりも高濃度の性ホルモンが存在することを確認している。また参考値ではあるが,黄斑円孔は他の疾患よりも硝子体中エストラジオール濃度が有意に高いといった結果を得ている。今後, 黄斑上膜についても同様に性ホルモンとの関連について検討する予定である。
【黄斑上膜組織中のセリンプロテアーゼについての組織学的検討】硝子体手術時に採取した黄斑上膜の検体を用いて,構成細胞や細胞外基質の状態を観察し,免疫反応の可能性が検討する。またセリンプロテアーゼ(キマーゼ,トリプターゼ)の局在を免疫染色によって観察する予定である。
【黄斑上膜に対する薬剤の開発】セリンプロテアーゼ阻害剤によって実験的黄斑上膜が抑制できるかをみる。セリンプロテアーゼ阻害剤(キマーゼ阻害剤,トリプターゼ阻害剤)は連携研究者である本学,薬理学教室の高井真司教授からの供与を受ける予定である。また,我々は以前に本学病態検査医学教室との共同研究で,ヒト硝子体のプロテオーム解析を行なった。キマーゼやトリプターゼなどのセリンプロテアーゼのインヒビターとしては,α1アンチトリプシン,α1アンチキモトリプシン,α2マクログロブリンなどが知られており,これらの生理活性物質の低下により特発性黄斑上膜や特発性黄斑円孔ではトリプターゼやキマーゼ活性が相対的に上昇している可能性が考えられる。この点についても検討する予定である。

次年度使用額が生じた理由

今年度行う予定であった成果発表を次年度4月に行うこととなった。
研究を進めるための試薬等消耗品の購入にあてたが、未使用分が生じることとなった。

次年度使用額の使用計画

4月に成果発表を行い、今年度の助成金とあわせてさらに研究を進める予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017 2016

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] 網膜硝子体疾患における硝子体と血清中トリプターゼ活性の比較2017

    • 著者名/発表者名
      佐藤孝樹,福本雅格,河本良輔,小林崇俊,喜田照代,堀江孝子,奥英弘,池田恒彦,高井真司,金徳男,中村公俊
    • 学会等名
      第121回日本眼科学会総会
    • 発表場所
      国際フォーラム(東京都千代田区)
    • 年月日
      2017-04-06 – 2017-04-09
  • [学会発表] サル眼の黄斑部網膜におけるニューロン分化機構2017

    • 著者名/発表者名
      池田恒彦,奥英弘,堀江妙子,喜田照代,高井真司,中村公俊
    • 学会等名
      第121回日本眼科学会総会
  • [学会発表] サル眼の黄斑部網膜におけるニューロン分化機構2016

    • 著者名/発表者名
      池田恒彦, 奥英弘, 堀江妙子, 喜田照代, 高井真司,中村公俊
    • 学会等名
      第9回RRM
    • 発表場所
      JPタワーホール&カンファレンス(東京都千代田区)
    • 年月日
      2016-12-10
  • [学会発表] 臨床所見から考える網膜硝子体疾患の病態と治療2016

    • 著者名/発表者名
      池田恒彦
    • 学会等名
      第70回日本臨床眼科学会
    • 発表場所
      国立京都国際会館(京都市左京区)
    • 年月日
      2016-11-03 – 2016-11-06

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公開日: 2018-01-16  

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