研究実績の概要 |
アデノウイルスは2000年までに51の血清型が報告され,類縁性からAからFの種に分類されていた。しかし,今世紀に入ってから従来の分離中和法による血清型ではなく,PCR法に基づいたウイルスDNAシークエンスの直接解析による分類法が広く行われるようになり,それによって52型以降の新型が相次いで報告されるようになった。これらの新型は中和法による分類ではないので「型」ということになったため,それまでの血清型のように分類と生物学的な相違が一致しない状況になっている。新型の中では53型はいわゆるキメラウイルスであり,わが国で散発的に結膜炎から検出され,D種に属す(Walsh MP, et al: PLoS One 4 : e5635, 2009)る。54型は8型変異株として,わが国で継続的に検出されたD種のウイルスである(Ishiko H, et al: J Clin Microbiol 46: 2002-8, 2008)。さらに最近,国内の結膜炎から新型として56型が分離され,D種に属する15/29型間の組み替え型であることがわかっている(Kaneko H, et al: J Clin Microbiol 49: 484-90, 2011)。これらは実際に国内で感染を生じており,そのウイルス学的な特徴は把握する必要がある。そこで,本施設ならびに協力研究施設の市中感染症例から分離された新型アデノウイルスに属する株を用いて,これらのアデノウイルス増殖抑制薬への反応性を検討するのが本研究の主たる課題である。対象薬剤はアデノウイルス増殖抑制効果が確認されたザルシタビン,スタブジン,インターフェロンアルファ及びガンマ用いる。これらに増殖抑制効果が見られるかをin vitroで検討することにしている。
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