研究課題
実験動物系における結膜アデノウイルスレセプターの差異の解析アデノウイルスによる結膜炎には確立された動物モデルはなく,Gordonらが白色家兎と用い,金子らはラットモデルを報告しているが,これらは発症確率が低率か臨床症状を欠くものであり,ヒトへの直接の応用が容易ではない。一方呼吸器感染系のアデノウイルス動物モデルは存在している。その理由は,B種アデノウイルスは咽頭,上気道粘膜への親和性が高いが,結膜炎を生じるD種はシアル酸がアデノウイルスレセプターとして使用されていることとの関連があるのではないかと考えられる。したがって,結膜炎を確実に発症させるモデルの確立には,D種,B種のいずれにも適合したレセプターを豊富に発現している組織を有する動物の選択が必要である。そこで,本研究では呼吸器モデルにすでに使用されているマウスとラットの結膜組織を検体として,免疫組織化学的解析を行い,インテグリン,CAR(coxackie and adenovirus receptor)及びシアル酸など結膜炎起炎性型のレセプターが組織にどの程度局在しているかの比較解析を行った。実験は本学臨床研究審査委員会の承認を得て,適切な動物の取り扱いを行い,ヘルシンキ宣言に従って,プロトコールに沿って研究を進めた。その結果複数のマウス及びラットの実験モデルについて、結膜における既知のアデノウイルスレセプターで免疫組織化学的検索が可能なものを検索したが、陽性の所見は得られなかった。このことから、ヒトアデノウイルスの感染モデルとしてはこれらの動物は適当ではないことが示された。
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