研究課題/領域番号 |
15K10915
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
本多 昌平 北海道大学, 大学病院, 助教 (90588089)
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研究分担者 |
北河 徳彦 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 医長 (00585135)
田中 祐吉 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 臨床研究所長 (50420691)
武冨 紹信 北海道大学, 医学研究科, 教授 (70363364)
宮城 久之 北海道大学, 医学研究科, 特任助教 (50596442)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肝芽腫 / DNAメチル化 / 腫瘍内不均一性 / 分岐進化 / 予後予測マーカー / miRNA発現 |
研究実績の概要 |
肝芽腫は胎児肝の発生過程におけるepigenetic異常、特にDNAメチル化異常が発癌および進展における主要なmodulatorとなっている。同一患者から得られた正常肝、原発巣の各組織型、転移巣より個別に抽出した核酸(DNA・RNA)を用いて、肝芽腫のheterogeneity(腫瘍内不均一性)および転移へと進展する過程におけるDNAメチル化プロファイルおよびmRNA発現プロファイルをゲノムワイドに解析する。先行研究によって判明した肝芽腫における癌特異的なメチル化異常と照合し選別することによって、DNAメチル化異常に基づく腫瘍内不均一性と分岐進化の観点から、肝芽腫の新規分子生物学的マーカーを確立し、個別化治療を開発することを目的としている。 平成27年度に肝芽腫7症例のパラフィン包埋(FFPE)切片から、正常肝組織、原発巣、転移巣よりそれぞれmacrodissectionによってDNAを分別回収し、メチル化ビーズアレイ解析をおこなったのと同じ検体を用いてRNAを抽出し、miRNA発現アレイ解析をおこなった。更には、平成28年度研究計画通り、肝芽腫細胞株(HuH6)よりシスプラチン耐性細胞株を作成し、耐性獲得前後のmRNA発現アレイ解析をおこなった。それによって有意に発現が減少した遺伝子を104個同定した。H29年度はこれまでの研究にて同定した進展に関わるメチル化異常およびシスプラチン耐性に関わるメチル化異常、さらには肝芽腫特異的なmiRNA発現異常との照合、選別をおこなう予定である。また臨床腫瘍検体を用いて絞り込んだ候補がん抑制遺伝子のメチル化率を測定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通りシスプラチン耐性株を用いた発現アレイ解析を行い、肝芽腫のシスプラチン耐性に関わるDNAメチル化異常を同定する試みが順調に進んでいる。臨床腫瘍検体40例を用いて候補遺伝子のバイサルトパイロシークエンシング解析を実施中であり、絞り込んだ候補遺伝子の中から臨床情報(化学療法抵抗性および予後)との相関を統計解析を用いて検討している。更には当初の研究計画には盛り込んでいなかったmiRNA発現アレイ解析を実施した(FFPE切片からのmRNA発現解析は核酸のクオリティーに問題がみられたため)。肝芽腫のエピジェネティック異常を解き明かす上でDNAメチル化異常とmiRNA発現異常とを組み合わせることは新たな知見を得られる可能性があり、網羅的解析データを目下統合・照合しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度研究計画通りに以下について推進していく方針である。 1. DNAメチル化率とmiRNA発現異常、臨床病理学的因子との関連を検討することによって、肝芽腫の予後予測因子として臨床応用されうる分子マーカーを確立する。 2. 核酸抽出に使用したFFPE切片を用いて候補遺伝子蛋白の免疫染色をおこない、蛋白レベルでの発現がメチル化異常に相関してみられることを確認する。 3. これまでに他癌種において報告がされていない新規候補がん抑制遺伝子のin vitro解析をおこない、がん抑制遺伝子としての機能を評価する。具体的には、肝芽腫腫瘍細胞株(Huh6,HepG2)にレンチウイルスベクターを用いて強制発現細胞株を作成し、以下につき解析をおこなう。(浸潤能:Bio coat マトリゲルinvasion assayにて評価を行う;増殖能:MTT assayにて評価を行う;細胞周期評価:FACSにて評価を行う) 4. 学会発表、論文作成・投稿をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
バイサルファイトパイロシークエンシング解析に用いる遺伝子数および検体数が当初予定より少なかったため、その実験に使用する費用に余剰が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
miRNA発現アレイ解析数を更に加えてDNAメチル異常との相関を解析する。バイサルファイトパイロシークエンシング解析にてメチル化率と臨床情報との相関を示す候補遺伝子につき、さらに多数例でのvalidation cohortを用いて予後予測マーカーの確立につなげる予定でありその費用に充てる。
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