研究課題/領域番号 |
15K10917
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
齋藤 武 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (20406044)
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研究分担者 |
幡野 雅彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (20208523)
吉田 英生 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (60210712)
坂本 明美 千葉大学, バイオメディカル研究センター, 准教授 (90359597)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 胆道閉鎖症 / 制御性T細胞 / 機能解析 / subpopulation / 小児外科学 / 免疫学 |
研究実績の概要 |
平成28年度は検討サンプルを増やすと同時に、対象とする機能的Treg subpopulationの幅を広げ、CFSE proliferation assayの実験系の確立を目指した。新たにBA群3例、胆汁鬱滞性control(CC)群2例、正常control(NC)群5例が加わり、結果CD4+CD25+Tリンパ球の末血出現頻度はBA群(15例) 4.6±3.6%、胆汁鬱滞control:CC群(6例)5.5±4.3%、正常control:NC群(11例)5.8±4.2%であった。細胞表面マーカーとしてCD45RAとFoxP3を用いると、活性化Tregの指標とされるCD45RA-FoxP3+はBA群2.5±2.2%, CC群4.4±3.5%, NC群4.7±2.9%で、BA群は他群に比し有意に低値を示した(p=0.04, 0.02)。CD127をマーカーとすると、各群におけるCD25+CD127lowの比率は2.4±3.2%、3.8±2.9%、4.2±3.4%であり、同様にBA群は他群に比し有意に低値を示した(p=0.02, 0.01)。以上よりBAにおける末血Tregのfrequencyは、従来のCD4+CD25+では他群と有意差を認めないが、機能的Tregのマーカーを加えより選別した場合は他群に比し有意に低値であることが示唆された。 CFSE assayは系の確立に傾注した。増殖抑制試験では特定のCFSE減衰(4回分裂)を示したエフェクター細胞の割合を、Treg添加前後で比較した。平時のM4分画の割合は、BA(5例)18±11%、CC(3例)18±8%、NC(6例)15±12%であったが、Treg×1添加後のM4分画は各12±10%、CC(3例)5±6%、NC(6例)6±3%であった。BA3例では3倍量のTregを添加してようやく24%(中央値)の増殖抑制が出現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度同様末血におけるfrequencyをflowcytometryで調査し、functionをCFSE assayで確認しているが、いずれもsystemic circulationにおけるTregの動態を観察するもので、局所における検討が多少遅滞している。現在ヒト肝組織検体を用い、各種抗体(CD4, CD25, FoxP3, CD127, Helios)による多重免疫染色実験に着手しており、系の調整を行っている。CD4+CD25+FoxP3陽性細胞の染色と同定は概ね安定して施行できているが、subpopulationの検出に必須であるCD127やHeliosの多重染色は再現性に乏しく、現在至適実験条件を探っている段階である。CD4とCD8の多重染色は円滑に施行できているため、上記染色実験が軌道に乗れば局所におけるCD25+CD127lowHelios+の多寡を、単なる絶対数でなく、CD4+CD8に対する割合・比として客観的に判定できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在局所における機能性Tregのfrequencyを、その絶対数ではなく、組織中のTリンパ球(CD4陽性細胞+CD8陽性細胞)数に占める機能性Tregの割合で評価することを目指している。今後CD127やHeliosの染色が軌道に乗れば、上記割合は容易に算出されると考える。 仮に上記が思惑通り進まなかった場合は、肝組織中のTreg-specific demethylated region (TSDR)をreal-time PCRで測定する予定である。機能性TregではFoxP3遺伝子の特定領域(TSDR)が脱メチル化するとされるため、これを定量化することで組織中の機能性Tregの数を判定しうると推測される。既報によりreal-time PCRのprimerは判明しているので、実験の進捗状況によってはアプローチを変更する予定である。 加えて局所Tregの機能評価については、2010年Oo YHらの報告(J Immunol 2010;184:2886-98)を参考とし、実験を進める予定である。彼らは、細胞表面マーカーの選択により原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎患者の肝組織よりCD3+CD4+CD25highもしくはCD127low細胞を抽出し、in vitro実験で[3H]チミジンを用いたリンパ球増殖抑制試験を提示した。同実験系を適正化することで、BAを含む小児肝胆道疾患でも局所におけるTreg subpopulation機能を解析しうると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は千葉大学大学院疾患生命医学教室(幡野雅彦教授)の指導のもとに進めており、同教室ではヒトおよびマウス実験で用いる試薬や実験器具類、物品類を多数所持している。本研究で使う試薬・物品の幾つかは同教室ですでに有していたため、新たに購入することを控え、教室のものを使用した。また、当初の予定では平成28年度の主たる実験は、末血Tregの動態から肝組織中Tregのそれに移行するつもりであった。しかしながら、組織中のCD127、Helios蛋白の染色に再現性がなく、現在条件設定を厳密に施行している段階であり、貴重なヒト検体を一気に染色する状況に達していない。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は肝組織中における機能性Treg候補であるCD4+CD25+, CD25+CD127low, CD45RA-FoxP3high(activated), FoxP3+Heliosらの多重免疫染色を軌道に乗せる方向であり、その後、肝組織中におけるFoxP3遺伝子の特定領域(TSDR)の定量をリアルタイムPCRを用いて解析する。前者で用いる各種抗体、後者におけるプライマーやプローブの選定(と作成)はすでに終了しており、本年度購入する予定である。今後は至適実験環境の設定というより、臨床検体を用いた解析の段階に進むため、両実験で使用する各種試薬類・物品類の購入にかかるコストは相応の額になると予想している。
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