研究課題/領域番号 |
15K10925
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
江角 元史郎 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (30452759)
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研究分担者 |
松浦 俊治 九州大学, 医学研究院, 講師 (10532856)
林田 真 九州大学, 医学研究員, 共同研究員 (70452761)
田口 智章 九州大学, 医学研究院, 教授 (20197247)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | TARC / 肝移植 / FK506 / 免疫抑制 / マーカー / 拒絶 / アレルギー |
研究実績の概要 |
本研究においては、肝臓移植患者の移植周術期および移植後フォローアップ期間における血清中TARC濃度(以下TARC)を測定することで、移植後の免疫抑制評価におけるTARCの有用性を検討した。 肝移植患者のTARCは測定限界(100pg/ ml以下)から、異常高値(5000pg/ml)まで様々な値をとったが、大半は基準範囲内であり、有意高値となったのは1~5%の一部症例のみであった。同一患者における経時的変化の追跡では、高値症例以外では経過中の変化はわずかであった。TARC高値となった症例では術後の上昇とステロイド使用に伴う減少を認めたが、TARCと急性期拒絶、術後感染所見との相関は確認されなかった。また、経過中に拒絶を認めた症例でもTARCの変動は認めなかった。 TARCはアトピー性皮膚炎の病勢マーカーとして広く使用されているが、今回測定にて異常高値を認めた症例にはアトピー性皮膚炎を伴った症例と伴わない症例が含まれていた。また、経過をたどることができた症例のうち1例は、移植後からTARC高値となり皮膚炎症状を発症した。 今日臓器移植の免疫抑制の中心的薬剤となっているFK506は、T細胞を抑制することによりその免疫抑制効果を実現しているが、同時にT細胞におけるTh1細胞とTh2 細胞の免疫抑制に不均衡が生じるとされ、食物を中心としたアレルギーを発症することが指摘されている。近年の報告では、成人の1.5%、小児の10から17%で新規の食物アレルギーを発症するとされ、アナフィラキシーショックを呈した報告もあった。 以上より、本研究の範囲内では肝臓移植患者におけるTARCの免疫抑制のマーカーとしての有用性は限定的であると結論した。一方で、TARCはFK506内服を行う患者におけるアレルギー発症を早期に検知できる指標となりうると考えられた。
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