研究実績の概要 |
これまでに、横紋筋肉腫特異的融合遺伝子PAX3-FOXO1 の融合部位を認識するピロール・イミダゾール・ポリアミド(PIP)にアルキル化剤クロラムブシル(ChB)を付加したChB-PIPを複数合成し、これらの分子のいくつかが標的配列特異的なDNA結合能と、細胞増殖抑制能を持つ事を確認した。しかしながら、そのいずれもPAX3-FOXO1融合遺伝子陽性細胞のみならず、融合遺伝子を持たない陰性細胞に対しても増殖抑制能を示したことから、今年度はChBと異なるアルキル化剤1,2,9,9atetrahydrocyclopropa[1,2-c]benz[1,2-e]indol-4-one (CBI) を付加したPIPの合成と機能解析を試みた。ペプチド合成機PMMS8を用いたPIP配列の合成、脱水縮重反応によるCBIの付加、HPLCによる精製を経て得られた分子につき、HPLC及び質量分析機を用いた解析により品質と純度の確認を行った。しかしながら、現時点では未だに目的の分子が得られておらず、引き続き合成を試みている。また、昨年度まで得られていた、ChB-PIPについて、その作用機序を検討するために、横紋筋肉腫を含む複数の細胞株に対する殺細胞効果を検討した。解析の結果、細胞株の持つ各種遺伝的変異に関係なく、ChB-PIPが強い殺細胞効果を持つ事がわかった。PAX3-FOXO1融合遺伝子陽性細胞特異的な効果は見られないものの、ChB-PIPはChBと比べ100倍薄い濃度でも効果を示すことから、今後一般的な抗腫瘍薬として開発されることが期待できる。
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