研究課題
我々はこれまでに、野生型PPP3CBの発現亢進または恒常活性型PPP3CB変異体がNFAT経路を活性化することによって、神経芽腫細胞増殖を促進することを明らかにし、さらに、NFATの新たな標的遺伝子として、MYCNとβ-Cateninを同定した。本年度は、Calcineurin阻害剤によるPPP3CBシグナリングへの抑制とその神経芽腫への抗腫瘍効果を検討した。まず、臨床に使用されているCalcineurin阻害剤Cyclosporin A (CsA)とFK506を用いて、神経芽腫由来のMYCN遺伝子増幅細胞株と非増幅細胞株への細胞増殖抑制効果および細胞死誘導効果を調べた。MTTアッセイとトリパンブルー色素排除試験法にて検討したところ、二種類の阻害剤は共に神経芽腫細胞株に対して時間および濃度依存性に細胞増殖を抑えることを明らかにした。また、フローサイトメトリー解析を行ったところ、上記の阻害剤処理は神経芽腫細胞株において、時間および濃度依存性にプログラム細胞死を引き起こすことが判明した。さらに、Calcineurin阻害剤で処理した細胞には、NFAT2とNFAT4の活性化が抑えられ、PPP3CBの発現がタンパク質レベルで、NFATの標的遺伝子c-Myc、MYCNとβ-Cateninの発現がmRNAレベルとタンパク質レベルの両方で減少した。これらの研究結果はCalcineurin阻害剤がPPP3CBの発現と活性を抑えることによってNFATの標的遺伝子の発現を抑制し、神経芽腫に対して抗腫瘍効果を発揮することを示し、PPP3CBを含むCalcineurinの活性阻害が高リスク神経芽腫への有効な治療法の一つとなる可能性が示唆された。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Jpn J Clin Oncol
巻: 48 ページ: 214-241
10.1093/jjco/hyx176
Oncotarget
巻: 8 ページ: 56684-56697
10.18632/oncotarget.18079.