研究課題/領域番号 |
15K10936
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
岡崎 睦 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50311618)
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研究分担者 |
西村 栄美 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (70396331)
松村 寛行 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (70581700)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 老化 / 細胞運命解析 / 皮膚 |
研究実績の概要 |
本研究では、遺伝子改変マウスを用いて皮膚の幹細胞の細胞運命の解析システムを構築し、色素斑の発生過程や発癌初期において、個々の角化細胞や色素細胞がどのようにターンオーバーしながら、均一な皮膚が不均一性状に変化していくかについて解析することを目的としている。併せて、ヒトの高齢者の露光部皮膚などの老化した皮膚においても同様の機序が存在するのかを解析し、ヒトの皮膚の老化機序の解明へとつなげ、良好な皮膚の維持や再生を実現することを目指すものである。これまで、以下に示す実験内容を行っている。 1)表皮基底細胞クローンの運命を解析できるシステムを構築した。表皮基底細胞を効率的に4色の色素でラベルするマルチカラークローンラベリングシステム(表皮confettiシステム)の構築を行い、表皮基底細胞クローンの運命を解析できるかについて検討した。 2)表皮基底細胞クローンが色素斑の形成や色素沈着、角化異常、発癌に関わるのか、検証した。上記confettiシステムに、色素斑や角化異常を誘導するストレス、発癌剤などを加え、個々の表皮基底細胞に由来する細胞の分布が表皮や毛包においてどのようにして変化していくのか、皮膚の色素や角化異常などの不均一性と関わるのかどうかについて検証した。 3)発癌初期における表皮基底細胞クローンの分布解析とクローン化を誘導する因子の同定について検討を行った。発癌刺激や放射線照射などのゲノムストレスを加え、経時的に観察を行ない、表皮基底細胞クローンと発癌刺激との関わりについて分析した。さらに、発癌部位、異常角化部位における遺伝子発現の解析を行い、クローン化を誘導する因子の同定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表皮基底細胞のマルチカラー・クローンラベリングシステムを用いて、表皮の幹細胞が加齢によりどのように変化するのか、蛍光顕微鏡を用いて観察を行った。その結果、表皮基底細胞クローンは、加齢や発癌刺激により経時的変化を示した。現在はクローン細胞の変化の誘因となる因子の同定を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、一部の表皮基底細胞クローンとクローン化に関与する因子が、厳密に発癌に寄与する可能性について、レーザーマイクロダイゼクション法と組み合わせた定量PCR法、免疫染色法などを用いて、検証を行って行く予定である。
さらに、ヒトの加齢皮膚や日光角化症病変部位を用いて、これまでのマウスの解析結果がヒトにおいても同様に言えるのかどうか、有効なマーカーとなるものを探索し、正常部皮膚や若年者の皮膚と比較を行いながら明らかにする。 具体的には、形成外科手術で得られる余剰皮膚(廃棄される皮膚)には、異常角化部位や日光角化症部位も混じるので、それらの部位を使用し、その発生機序や適切な切除部位の選定において知見を得る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度にレーザーマイクロダイゼクション法を用いた解析を行う予定であったが、2016年度に行うことに変更したため、その分に相当する予算は持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
レーザーマイクロダイゼクションにて採取したサンプルは、ホールゲノム シークエンスを行う。1サンプルにつき10-20万円以上の予算を必要とするため、繰り越した研究費は、2016年度に、主にその解析に使用する予定である。
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