研究課題/領域番号 |
15K10939
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
齊藤 晋 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00450239)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 動脈 / 運動生理学 / 3次元動態解析 |
研究実績の概要 |
皮弁移植や血行再建においては、移植した血管が確実に末梢に送血し続ける必要がある。しかしながら、移植血管は時にねじれや屈曲により乱流や停滞を生じて血栓を生じ、閉塞に至る。これは自家血管の移植でも起こり得ることであるが、一方で、健常組織内の血管は深屈曲が可能な関節周囲の血管であっても、血流は途絶することなく安定して送血し続けている。そこには何らかの屈曲や粘転を避けるメカニズムが存在すると仮説した。したがって本研究の直接的な目的は関節運動における動脈の挙動をin vivoに調べ、その原動力となる組織/解剖学的構造を解明し、移植手術における血管配置理論を確立することであり、副次的な目的は血管が屈曲粘転せずに血流を維持する機構を解明し、より機能的な人工血管や再生血管の作成を目指すことである。H27年度は健常者の手を用いて観察的実験を行った。伸展位、屈曲30度、60度、90度とそれぞれの指位において固有指動脈を撮像し、動脈の走行を3次元で記録、その変化をコンピューター解析した。屈曲にしたがって、動脈の走行が3次元に変化することがわかった。特に血管の弯曲変形は非線形的な変化を示した。その非線形的変化は関節運動により生じる血管内のひずみを分散させ、一部分に過剰な負荷がかかり屈曲してしまわないようにしていると考えられた。問題はそのような3次元的な形態変化が内在的因子に基因しているか、または外因性によるものかを考える必要がある。つまり内在性であれば、血管壁の構造に秩序が存在するかを調べる必要がある。今後は年齢や性別による血管形態の違いを調べるとともに、血管壁の組織学的、工学的特性について解析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血管撮影の信頼性を高めるべく、器械の作成を行ったが、その設計や製作に時間を費やしたため、被験者のサンプル数は目的の数に到達していないが、予備的な結果は出てきており、その結果を踏まえて検討項目を増やしながら、測定を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画にしたがって推進を行う。手術時に廃棄される血管片を対象として組織学的手法を用いて線維の3次元構造解析を行う。ただし研究計画時は光学顕微鏡や偏光顕微鏡的な観察を予定していたが、準備的な研究結果では、多光子レーザー顕微鏡を用いた膠原線維や弾性線維の構造解析の信頼性が光学的顕微鏡によるものより優れていたため、その点で研究計画を変更している。
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