研究課題
ヒト角化細胞に対して黄色ブドウ球菌の死菌で刺激実験を行ったところ、IFNβ、ILー1βなどの各種炎症性サイトカインの産生がみられたが、直前に表皮ブドウ球菌による刺激を行ったところ、黄色ブドウ球菌による炎症性サイトカインの産生が抑制された。次にマウスの耳介に死菌による皮下膿瘍を作製したところ、黄色ブドウ球菌による皮下膿瘍では膿瘍内の炎症細胞の細胞質内に核内タンパクの一つであるHigh Mobility Group Box 1(以下HMGB1)が強陽性発現していたのに対し、表皮ブドウ球菌による皮下膿瘍では発現がみられなかった。この結果から表皮ブドウ球菌はHMGB1の細胞内および細胞外への誘導を抑制することで炎症反応を抑制すると推測し、HMGB1を用いた抗炎症効果の実験を行った。細菌膜タンパクの一種であるLTAやLPS,およびdsRNAであるpoly(I:C)を用いてヒト角化細胞に炎症性サイトカインを誘導させ、細胞外からHMGB1が炎症作用に対してどのように反応するか調べたところ、HMGB1の還元型であるreduced-HMGB1を前投与することで、poly(I:C)による炎症誘導効果を抑制することが明らかとなった。また、さらにpoly(I:C)の細胞内シグナル系においては、NF-kB経路とIRF3経路を抑制しており、MAPK経路は抑制されていなかった。HMGB1は細胞外に放出されると容易に酸化されてDisulfide-HMGB1に変化するとされるが、このDisulfide-HMGB1を用いて同様の実験を行ったところ、抑制効果はみられず、むしろ炎症効果を増幅する作用がみられた。以上のことからHMGB1はその酸化還元型により、角化細胞における炎症反応に対して抑制効果および増幅効果を持つことが明らかとなった。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Journal of DermatologicalScience
巻: 90 ページ: 154-165
https://doi.org/10.1016/j.jdermsci.2018.01.007