1.顔面筋群 SD系ラットに三種混合麻酔薬の腹腔内投与後、腹臥位に固定し、下顎縁切開にて顔面神経頬骨枝を露出した。顔面神経に対し、以下の操作を行った。一側では、頬骨枝を切離し、他側では頬骨枝を切離後、直ちに10-0ナイロンにて再縫合した(n=5)。実験後、1、2、4週目に、同じく麻酔をかけ、眼輪筋に針電極を刺入し、安静時筋電図を記録した。 2.四肢筋肉群 A群と同様の麻酔後、腹臥位固定し、大腿後面に皮膚切開を加え、腓骨神経を剥離露出した。一側で腓骨神経を切離し、他側では腓骨神経を切離後、直ちに10-0ナイロンにて再縫合した。実験後、1、2、4週目に、同じく上記の方法にて麻酔をかけ、EDL(extensor digitorum longus)に針電極を刺入し、安静時筋電図を記録した。 筋電図検査においては、アース、照明器具、術者の位置など非常に微妙な環境の変化で、ハムが入り、微小な電位の記録に難渋した。そのため、アルミ箔でラットを覆う、フィルターの調整、照明器具の変更などの工夫を重ねた。また、両群とも、麻酔深度が深いと安静時電位はほとんど記録されなかったため、麻酔剤の量を半減させて安静時電位の記録を行った。眼輪筋に記録針電極をおいたA群では近傍の咬筋の電位が混入し、有意性の確認が難しかったため、次年度予定の下肢筋を用いた実験を行った。その結果、再現性のある安静時電位を得ることができるようになった。安静時電位はふつうヒトでしられているように切断後2週間を経てから出現するのではなく、1週後にはすでに認められた。そして、波形は線維束電位が主体であり、陽性棘波に相当するものはほとんど見られなかった。神経縫合側と非縫合側との違いに関しては、脱神経電位の頻度、波形上の違いとして確認することが現時点ではできていない。しかし、測定確率は明らかに上昇しており、今後の進捗が期待される。
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