研究課題/領域番号 |
15K10946
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
素輪 善弘 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80468264)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 末梢神経 / シュワン細胞 / ダイレクト・リプログラミング |
研究実績の概要 |
シュワン細胞の発生や分化に大きく関わる因子合計9因子のうち2因子の強制発現でヒト線維芽細胞の約30%をシュワン細胞に直接誘導できる(Direct reprogramming schwann cell:dSC)ことが明らかとなった。われわれは、まず真(内在性の)のシュワン細胞(Primary Schwann cell:pSC)と比較するためにヒト由来 培養シュワン細胞の分離・培養を行った。皮膚由来ヒト線維芽細胞(HDF)からiSCへの細胞転換を分子生物学的に確認するため、dSC、pSC、HDFのそれぞれについて免疫組織学的染色とRT-PCRを行い、細胞の表面抗原や遺伝子発現プロファイリングの比較を行った。結果、dSCはpSC同様、s100b,p75NTR,NG2、GAP43といったシュワン細胞マーカーの陽性であったが、通常の条件ではグリアマーカーであるGFAPやミエリンマーカーであるMBPやP0は陰性であった。遺伝子レベルにおいても同様のパターンがみられた。次にdSCの神経突起伸長効果などの細胞機能の検証を行った。そこで、dSC由来の神経再生関連放出因子をELISA法で検討したところ、pSCとdSCの神経栄養因子発現パターンは類似しており、いずれもConに比較して発現量は有意に増加していた。 培養下での軸索伸長作用についての機能比較を行うためにdSC、pSC、HDFの培養上清を採取し、NG108-15 neuronal cells(a motor neuron-like cell line: Jiang et al. 2003)の神経突起伸長に対する促進効果を計測し比較したところcSCとdSCいずれにおいても、Conに比較して神経突起伸長効果は優れており、両者はcomparableであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
われわれの方法で誘導したシュワン細胞をマウス坐骨神経欠損部に移植する場合の足場の設定に予定以上に時間を費やしている。また後根神経との培養条件の設定に予定より大幅な時間が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後、さらに因子導入効率および直接転換効率を改善していける余地があると思われる。またdSCの神経再生に対する機能性についてもさらに詳細に検証していく必要がある。特にわれわれの方法で誘導したシュワン細胞が神経再生の肝と思われるミエリン形成能について十分な確認が必要であると考えている。神経損傷部位にdSCの移植を行い生体内で神経再生の促進、免疫不全マウス坐骨神経欠損モデルを用いて検討する。このとき比較対照群として、神経分化させた脂肪由来幹細胞(differentiated adipose derived stem cells:dADSCs)とpSCの2種類を使用する計画である。免疫不全マウスの坐骨神経幹に5㎜gapを作成した後、これらの細胞をゼラチンハイドロゲルチューブに播種させ移植する。術後異なる期間(2,5,8週目)をおいて、組織学的検索(架橋再生組織面積、axon再生、髄鞘形成)、行動学的検索(BBB scoreおよびWalking track analysis),坐骨神経機能評価法(SFI)および電気生理学的検索(Nerve conduction verocity study)を行い、神経再生促進効果をiSC、dADSC、cSC間で比較検討する。髄鞘形成能については免疫電顕を行い、実際の形成髄鞘の厚さと質を解析する。またNerve conduction verocity studyを施行する。移植実験において十分な神経再生促進効果が認められない場合には、種々のスキャホルドと共に移植することで、細胞の生着と局所での保持を高めることを企図している。
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