ゼノフリーの培養系の樹立の検討 我々が線維芽細胞から直接転換で誘導したシュワン細胞の臨床応用を考えた時、導入の過程で動物由来の血清を使用することは、未知のウィルスの混入などをの可能性を完全に排除することができないことなど、使用上の安全面において障壁となる。そこで、遺伝子導入後のヒト線維芽細胞を、FBS添加培地に換えて種々の無血清合成培地、またはヒト血清を添加した培地を用いて培養を行い、最適なゼノフリー培養条件を検討した。しかしながら、FBS添加培地に比して、シュワン細胞へのダイレクト・リプログラミングの効率が37%から5%に低下した。また誘導した誘導シュワン細胞のViabilityも低下することが明らかとなった。今後、誘導したシュワン細胞の培養下維持のためにFBSに含有されている必須の因子を同定することが必要であり、今後の重要な研究課題と思える。
線維芽細胞以外の体細胞(血液リンパ球、脂肪由来の間質細胞)からの誘導 皮膚線維芽細胞以外のさらなる低侵襲な体細胞として、血液由来の細胞もしくは脂肪組織由来の間質細胞が考えられる。これらの細胞を、線維芽細胞と同様の方法で遺伝子導入後、シュワンに誘導される効率と誘導に要する期間を比較し、もっとも適した細胞を検討した。血管内皮細胞を細胞材料としても、20%近くの効率でシュワン細胞に誘導できたが、内皮細胞の増殖力が乏しく、遺伝子の導入効率に問題があった。一方、皮膚線維芽細胞の代替え細胞として脂肪組織由来の間質細胞は、皮膚線維芽細胞を上回る(45%)導入効率を示した。しかし、われわれが目指した線維芽細胞60%以上のシュワン細胞への誘導効率を持つ代替え細胞ソースが見いだされた。今後、線維芽細胞に代わる細胞材料として脂肪間質細胞が注目されていくことが予想される。
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