研究課題/領域番号 |
15K10959
|
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
古賀 憲幸 久留米大学, 医学部, 講師 (30309851)
|
研究分担者 |
太田 啓介 久留米大学, 医学部, 准教授 (00258401)
力丸 由起子 (西由起子) 久留米大学, 医学部, 助教 (90368960)
右田 尚 久留米大学, 医学部, 助教 (80412518)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ケロイド / 創傷治癒 / FIB/SEM tomography / 三次元再構築 |
研究実績の概要 |
肥厚性瘢痕とケロイドは、ともに創傷治癒過程でコラーゲン線維が過剰に生産された状態であるが、未だにその発生機序や診断に関しては不明なことが多く、組織学的に両者を鑑別することが困難な疾患である。肥厚性瘢痕とケロイドの発生には、コラーゲン線維産生を行っている線維芽細胞と近年炎症や免疫反応に重要な役割を担っていることが明らかになってきたマクロファージが何らかの役割を担っていると考えられるが、これまでの2次元切片の観察での解析は不可能であった。そこで、2010年に久留米大学に導入された電子顕微鏡はFIB/SEM(focused ion beam/scanning electron microscope)を用いて、細胞・組織の三次元微細構造解析を行うことで、新たな知見を得る試みを行っている。 ① 正常皮膚、肥厚性瘢痕とケロイドの組織採取と組織サンプルの電子顕微鏡観察:形成外科手術によって採取された正常皮膚、肥厚性瘢痕、ケロイド及び成熟瘢痕の組織を各々n=5ずつ採取し、随時重金属en bloc染色を行い、FIB/SEM観察を行っている。観察範囲は70μm角で、画像の3D再構築と解析では、a) 組織内のコラーゲン線維の3D配置や走向、b) 線維芽細胞やマクロファージの分布及び両者の接点に着目して微細構造解析を行っている。特にb)では、各組織間に明らかな相違点が見られており、定量解析による評価を試みている。 ② 正常皮膚、肥厚性瘢痕とケロイドの光学顕微鏡レベルでの解析:①の手法で取得できる画像の大きさは、直径70μmのごく狭い範囲であるため、得られた所見が組織全体でも観察できるかどうかを検討する必要がある。そこで、FIB/SEMの解析と平行して、線維芽細胞のマーカーであるHSP47とマクロファージのマーカーであるIba-1の免疫二重染色にて組織を観察し、定量解析を試みている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度の予定であった正常皮膚、肥厚性瘢痕とケロイド組織内でのコラーゲン線維や細胞間の接触形態についての解析は、必要なサンプル数の取得も予定通りに行え、すでに試料は必要十分な数に達している。試料の作成及び組織の観察についても概ねスムーズに進行している。観察対象が、遺伝的多様性を持つヒトの試料であるので、より正確な観察結果を得る目的で1試料あたり複数箇所の観察を行う必要がある。従って、電子顕微鏡解析には、予定よりやや時間がかかる見込みである。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までに解析を行って得られた所見から、今後の方針として、次の2点を明らかにする予定である。1)ケロイドでは周囲の健常皮膚に水平方向へ伸展・増殖していく傾向が見られるが、このような特異的なケロイド増大のメカニズムを解明することである。創にかかる緊張、これについては力学計算を応用した応力を工学的手法によって解明しようとする試みが進められつつあるが、この応力の方向と線維芽細胞の向きや細胞の配列とに何らかの関係性がみられるか検討を加える予定である。また、2)細胞間接触に関わる分子機構の解明についても検討を加える予定である。既に候補となり得る分子機構についてはpick up作業が終了しており、当初の計画に加えて上述の2項目についても研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
重金属染色に用いる試薬や消耗品等の購入費用が節減でき、当初の予定金額を下回ったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度に得られた知見から、当初の計画に加えて新たな実験系を行う必要が生じたため、免疫染色に用いる試薬等の購入に充てる予定である。また、現プロジェクトの進行に最も必要な実験動物の購入・維持費および消耗品の購入にも充てる予定である。
|