研究課題/領域番号 |
15K10962
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
落合 博子 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 再生医療研究室, 室長 (60374162)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 皮膚創傷治癒 / 皮膚再生 / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
筆者は、これまで骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC: Bone marrow derived Mesenchymal Stem Cell)を皮膚の創傷に移植すると正常に近い皮膚構造が再生されることを確認し、すでに臨床応用の実績がある。多能性幹細胞MUSE細胞(Multilineage- differentiating stress enduring cell)はMSCの一部の細胞とされ、損傷皮膚や軟部組織に対しても、創傷治癒促進効果が期待できる。また、少量の皮膚の犠牲のみで創傷治癒を促進することができることは大きな利点であると考える。そこで、本研究では、Muse細胞移植が皮膚創傷治癒に及ぼす効果と作用機序を検討し、患者の負担の少ない臨床応用の実現を目的としている。 平成27年度は、成獣F344オスラットの骨髄由来皮膚間葉系幹細胞(BMSC: Bone marrow derived Mesenchymal Stem Cell)と皮膚由来MUSE細胞をラット背部皮膚欠損創に移植した場合の創傷治癒の比較を行うための予備実験を行った。 BMSCは、ラット大腿骨より骨髄を採取してプラスチックディッシュに播種し、DMEM+10%FBS+1%Penicillin-Streptomycinで培養を行い、3継代後の細胞を用いた。MUSE細胞は、ラット皮膚を採取して、細かく破砕し、プラスチックディッシュに播種してα-MEM+10%FBS+0.1mg/mL Kanamycinで培養を行った。ラット背部に3×3cmの皮膚全層欠損創を作成し、周囲皮内、筋膜下へ細胞注入移植、もしくは潰瘍に塗布し、創傷治癒の差異を確認中である。現在、細胞の移植方法及び細胞の違いによる明らかな差異を認めず、細胞移植手技を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付決定が平成27年11月20日だったため、平成27年度分の実験準備の開始が遅くなった。また、BMSC細胞とMUSE細胞の創傷治癒促進能力の比較があらかじめ必要であると判断し、初年度の実験計画にラットの予備実験が追加となった。
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今後の研究の推進方策 |
ラット皮膚欠損創に対する幹細胞投与方法を検討後、GFPマウス、免疫不全マウスを用いた実験に移行する。 1.GFPマウス皮膚由来MUSE細胞の培養 2.免疫不全マウスの皮膚創傷へのMUSE細胞移植および組織学的検討 皮膚潰瘍モデル:免疫不全マウスの背部にリングを装着した皮膚欠損創を作成。MUSE細胞を創部に局注・移植し、創治癒の過程を肉眼的に観察し、デジタルカメラで撮影し、潰瘍面積および肉芽形成の分析を行う。コントロールとして、線維芽細胞およびBMSCを用いる。 また、MUSE細胞移植後1,3,5,7日目に創部を採取する。採取した組織はOCTコンパウンドに包埋し、急速凍結後に7μmの凍結切片を作成する。乾燥させた後、アセトンで10分間、室温で固定する。蛍光顕微鏡により、移植したGFP細胞の生着数と生着部位を確認する。移植細胞の機能評価は、組織学的検討により行う。マッソントリクローム染色により、膠原線維の配列や成熟の評価を行う。免疫染色によるαSMA, Cytokeratin、弾性線維などの発現を検討する。Western blottingなどによりTGFβ,HGFの発現量の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、ほぼ計画通りの使用であったが、42,481円の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
実験の物品費及び人件費に使用するとともに、国際学会での発表目的に参加費と旅費が必要となる予定である。
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