研究課題/領域番号 |
15K10965
|
研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
岡田 基 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (80431427)
|
研究分担者 |
藤田 智 旭川医科大学, 医学部, 教授 (10173428)
西浦 猛 旭川医科大学, 医学部, その他 (90567041)
柏木 友太 旭川医科大学, 医学部, 助教 (70648336)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 敗血症性心筋症 / β遮断薬 / テロメア |
研究実績の概要 |
敗血症の予後予測因子とβ遮断薬の有効性と機序の解明についての研究について、初年度の進捗状況を報告する。 培養心筋芽細胞細胞を用いた実験では、過酸化水素による酸化ストレス刺激でアポトーシスが誘導され、テロメア長が短縮することを確認した。プロプラノロール、カルベジロール、メトプロロールの前処理で、アポトーシスの抑制とテロメア長短縮の抑制を確認したが、カルベジロール群でより有効であった。 マウスCLP腹膜炎誘発敗血症モデルによるカルベジロールの効果を検討したところ、カルベジロール1mg/kg連日経口投与により、1週間生命予後が改善した。連日の心エコー検査では未治療群は心拡大と心機能の低下をきたし、いわゆる敗血症性心筋症の病態を呈するのに対し、カルベジロール群では心機能低下が有意に抑制された。この心機能の低下はCLP作成後72時間でもっとも低下し、カルベジロール群で心機能低下が抑制された。また、2週間にわたり拡張機能は良好であった。 1週間後の白血球のテロメア長を検討したところ、未治療群に比べカルベジロール群でテロメア長短縮が抑制された。また、心筋サンプルを用いた検討では、カルベジロール群でp53の発現低下、pgc-1a, tertの発現増加を認め、老化関連のシグナルであるtelomere-p53-pgc-1aを介する効果であることが示唆された。さらにMito trackerやCytochrome C活性の測定により心筋のミトコンドリア機能が改善することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年間の基礎実験および動物実験の結果が蓄積されている。 当初の計画はプロプラノロールをメインに使用する予定だったが、培養細胞による基礎実験でカルベジロールの効果がより大きいと判断し、先にカルベジロールを用いた動物実験を遂行している。研究実績の概要で示した通り、概ね仮説通りに進捗している。 本年度は国際学会での発表及び年度末までに論文投稿を予定している。
|
今後の研究の推進方策 |
テロメア長が敗血症の病態を反映する可能性が示唆されたが、マイクロRNAの検討が遅れている。培養細胞では確認したが、動物モデルでの検討を継続する。 また、β遮断薬のクラスイフェクトについても検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた、生体モニター装置については学内の設備を使用することで代用可能であったため、購入しなかった。 一方、マウスから採取できる血液や心筋組織などの生体サンプルは、きわめて少量であるため、また、カルベジロールの用量設定にかかる予備実験が予定より増加したため使用するマウスの数は増加した。
|
次年度使用額の使用計画 |
マウスの購入匹数および動物施設の管理にかかわるコストの発生がある。
|