破裂動脈瘤によるくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage; SAH)は脳卒中における突然死の最大の要因として悪名高き疾患である。なかでも発症から2週以内に約4割の患者で起こりうる遅発性脳虚血(delayed cerebral ischemia; DCI)は、近年の画像診断・検査法の進歩にもかかわらず、発症の予測や有効な治療法すら確立されておらず、約半数が重度後遺症や死亡に至る、SAHの最大の予後増悪因子として広く知られている。 本研究では、DCIの原因として脳局所の微小循環障害に着目し、SAHモデル動物を用いた生体イメージングの導入により、その病態解明と治療法の洗練化にある。研究期間は4年間を設定し、小動物用MRI(秋田県立脳血管研究センター)および2光子顕微鏡(本学加齢医学研究所)を用いた動物実験から検証を行った。研究は、安定したSAHモデルの作成(実験1: 平成27年度)と脳MRI撮像法の確立とともに、Closed cranial bone windowによる2光子顕微鏡での生体イメージングの新規実験系の立ち上げ(実験2: 平成27年度)を行った。引き続く2年間において、微小血管構造の可視化とHyperdynamic療法の治療効果の解析(実験3: 平成28~29年度)に移行することができた。尚、グリアレベルでの微小循環障害の可視化においては動物の調達が困難であったため、各種薬剤の前投与を組み合わせたプロトコールを作成し、既存のHyperdynamic療法の脳微小循環障害に対する治療機序としてのHypoxia-inducible factorを介した脳保護作用について詳細な検討を行った(実験4: 平成29年度中期~30年度)。最終的に、当初の研究計画の進捗とそれを踏まえた新たな研究の必要性から、本研究の早期完了と新規課題への移行に至った。
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