外傷による出血性ショック症例に対し、無作為割付非盲検前向き介入研究試験を行った。救命救急センターに搬送された外傷性大量出血を伴う症例で、初療医が大量輸血プロトコールを導入した20歳以上の男女を対象とした。大量輸血プロトコールとは交差適合試験を省略したO(+)型濃厚赤血球製剤投与を含む緊急大量輸血指針であり、迅速な止血処置に並行して状態の安定が図られるまで赤血球:新鮮凍結血漿:血小板=1:1:1で投与を継続するものである。 本プロトコールが導入された際、初療医は本研究責任者に連絡する。研究責任者は封筒法により、FFPを含む従来輸血かつフィブリノゲン濃縮製剤投与を行う群(介入群)とFFPを含む従来輸血を行う群(対照群)の2群に割り付ける。介入群は従来輸血に加えて患者来院後30分を目処にフィブリノゲン濃縮製剤3gを1回静脈内に投与する。対照群は従来輸血療法を開始する。 平成26年に東京医科歯科大学生命倫理研究センターの承認を受けて開始された本研究は、平成27年より科研費の補助金を受けて研究継続中である。平成31年度までに計23症例が蓄積された。新型コロナウィルス感染症により研究期間の延長し、令和2年度は研究最終年度となるが、研究責任者が重症コロナウィルス感染症診療に従事しているために研究エフォートがほぼゼロとなっているため感染症が一段落してから最終的な統計解析を進める予定である。本研究開始時に必要症例数は50と試算されており、目標症例数の約半数の症例蓄積にとどまったが、得られた症例の範囲内で発信可能なエビデンスをまとめる。
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