研究課題
①スフィンゴシン1-リン酸2型(S1P2)受容体の活性化による血管バリア破綻の抑制効果について、血小板活性化因子(PAF)の血管透過性亢進反応におけるS1P2受容体選択的アゴニストの影響をMilesアッセイを用いて検討した。S1P2受容体選択的アゴニストはPAFによるエバンスブルー色素漏出に対して抑制作用を示したが、効果は弱かった。以上の結果は,血中S1PレベルがマイクロMオーダーであり、S1P2受容体が恒常的に活性化されていること、また、S1P2受容体アゴニストのアゴニスト活性がS1Pより100倍弱いためS1P2受容体の十分な活性化が得られなかったのではないかと考えた。②これまでの結果から、S1P2受容体欠損のリポ多糖誘発急性肺損傷(ALI)による血管バリア破綻の悪化は内皮細胞に発現する内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)が関与することを明らかにしている。また、S1P2受容体欠損は抗がん剤ブレオマイシン(Bleo)の腹腔内反復投与によるALIモデルにおいても血管透過性を悪化させた。Bleoによる内皮細胞障害を検討するため、Bleo誘発ALIモデルの肺を用いて、マイクロアレイ解析を行った(交付申請時の計画に比べ、その他の割合が増えた理由)。血管透過性に関与するサイトカインや接着因子の遺伝子発現変動の他に、細胞老化に関与する遺伝子群の発現増加が認められた。私たちは線維芽細胞やマクロファージの細胞老化がS1P2受容体欠損で促進されることを観察していることから、S1P2受容体欠損によるBleo誘発ALIの悪化は、S1P2受容体欠損によるeNOSの活性化の他に細胞老化促進による内皮細胞の機能低下が起こったためと考え、今後検討していきたい。③該当年度の予算執行は計画通りに行えなかったが、交付申請時の目標をおおむね達成できたため、予定通り平成29年度を本研究課題の最終年度とした。
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PLoS One
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in press
巻: 12 ページ: e0182329
doi: 10.1371/journal.pone.0182329. eCollection 2017