研究課題
本研究は腸音数を非侵襲的に測定しリアルタイムに可視化・定量化することができる世界初のモニタリングシステムを用いた臨床研究である.本研究では,まず前研究で開発したプロトタイプのモニタ機器の大幅な改良に取り組んできた.前々度及び前年度には腹部に貼付するマイク型の腸音センサの重量を軽量化し,患者に与える負担を軽減した.また,腸音数の経時的変化を定性的に行いやすくするため腸音数測定時間表示を連続48時間に拡大するなど,より臨床使用に即したモニタ画面となるよう工夫した.当該年度は,個体差によるばらつきを減じるためキャリブレーション機能を改良した.これは患者の腸骨稜に貼付したマイクからテンプレート音を発生させ,骨伝導により音を解析し自動キャリブレーションする機能である.この機能を用いることで患者の体格差や施工者の技量に左右されず腸音数をモニタリングすることが可能となった.さらに,これまでの研究でしばしば環境音を腸音と誤認識する点についても検討を加えた.4つの腸音センサーのうち2つを環境音測定センサーとして用いることとし,可視的及び定量的に誤認識した腸音数が分析可能となるよう工夫した.本モニタリングシステムを用いた臨床研究については,腸音数の測定及び腸音検出精度評価を目的とした単施設研究を前年度に開始し,当該年度まで継続した.本研究ではさらにIL-6血中濃度や血糖値と腸音数との関係,あるいは鎮静薬や昇圧薬などの薬剤と腸音数との関係を解析し,合併症の診断における本システムの有用性評価も合わせて行う予定である.前々年度及び前年度は学会でこれら研究について適宜報告してきた.当該年度は,本モニタリング機器の改良版を複数施設に配布し,今後多施設共同研究などさらなる腸音の研究推進のため研究会を立ち上げ,第一回研究会会合を開催した.
すべて 2017
すべて 学会発表 (1件)