研究課題/領域番号 |
15K10972
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
針井 則一 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (80377522)
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研究分担者 |
武岡 真司 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20222094)
松田 兼一 山梨大学, 総合研究部, 教授 (60282480)
森口 武史 山梨大学, 総合研究部, 講師 (60422680)
後藤 順子 山梨大学, 総合研究部, 助教 (60530102)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 急性呼吸窮迫症候群 / ARDS / total liquid ventilation |
研究実績の概要 |
急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome, ARDS)は敗血症・肺炎・熱傷・外傷などの全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome, SIRS)の発症を契機とし,肺胞領域の非特異的な炎症から広範囲の肺損傷に至ることによって,重篤な低酸素血症を呈する肺の炎症性疾患である.その病態には,体内で過剰に産生された炎症性サイトカインをはじめとした炎症物質による肺胞でのマクロファージと動員された好中球の活性化が関与している.好中球は異物の貪食・殺菌・分解を行う過程で,肺毛細血管内皮および肺胞上皮の傷害し,間質の浮腫や肺胞内の壊死物質を含む浸出液の貯留やサーファクタントの喪失と肺胞の虚脱を引き起こし,換気血流比不均衡やシャント,拡散障害などの肺機能の低下が生じさせる. 重症ARDSによる呼吸不全の治療としての人工呼吸器療法はあくまでも支持療法であり,ARDSによる肺胞の傷害を直接に除去し,肺機能の低下を抑制しうる治療法ではない. 今回,我々はナノバブル分散酸素富化水による完全液体換気(total liquid ventilation, TLV)システムを応用した肺胞洗浄法を構築し,エンドトキシン気管内投与・ラットARDSモデルを用いて炎症を積極的に鎮静化し肺機能低下の抑制,救命率を上げうる治療法を確立する. 平成27年度はナノバブル酸素富化条件と試作されているTLVの性能を評価し,TLVラットの長期性異存なTLVのプロトコールを行うことである.具体的には,ナノバブル発生器の出力,液体呼吸回路の設計,稼働条件(回路内圧,1回置換量,送排液時間比,置換回数)などを最適化を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ナノバブル酸素富化生理食塩水によるラット短時間液体呼吸¥TLVの回路の設計 ナノバブル発生器で作られた酸素負荷水は,ラット気管内に送液する前に一旦,リザーバに投入して,粗大な泡を除去する必要があるが,回路長とリザーバの構造により,溶剤酸素量が低下することが判明したために,最適化に時間を要した.また,リン脂質のDipalmitoylphosphatidylcholine,(DPPC)を主とする人工サーファクタントを投与し,通常呼吸に復帰させる条件についても検討する必要がある.しかし,TLVラットの生存率を向上させうるインレット・アウトレットバルブを開放と閉鎖時間,液体呼吸の回数,一回置換量,充満時間などの稼働条件を十分に検討し得た.現在,ラットARDSモデルマウスへの導入を計画している.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度以降は前年までに最適化したTLVをARDSモデルラットに対して行い,酸素化能,炎症の軽減効果について検討する.ARDSモデルラットとしてLPS気管投与モデルを用いる.ラットの各群は液体呼吸の条件,すなわち置換液の組成,人工サーファクタント,抗炎症脂質の種類・濃度によって3~4群に分けて比較検討する.液体呼吸開始後より,排出された洗浄液を回収し,一部は遠心し細胞成分を回収した洗浄液および血中の各種サイトカイン濃度を測定する.液体呼吸前後で経時的血液ガス分析を行い,酸素化能を評価と肺の組織学的評価を行う.一部の群では,義死させずにTLVから通常呼吸に戻し,生存率を比較する.
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