研究実績の概要 |
近年、赤肉などの高コリン食を習慣的に摂取すると、腸内細菌叢の働きを介して動脈硬化や血管炎症が惹起される事が明らかになってきた。脳動脈瘤破裂のプロセスには、血管の炎症が重要な役割を果たす事は広く知られている。本研究は腸内細菌叢を薬剤投与や食餌によって制御する事により炎症を制御し、ひいては脳動脈瘤の生成・破裂を予防する事を目的としている。 まず、様々な乳酸菌類をマウスに経口投与する事で血管の炎症を抑制し、脳動脈瘤の生成・破裂を抑制する事を最初の目的としたが、残念ながら本実験で用いた動物モデルにおいては目的を達成する事はできなかった。 次に、抗生物質の投与により、腸内細菌を制御する事を目的とし、vancomycin, metronidazole, ampicillin, neomycin の4種抗生物質を3週間経口飲水摂取させたところ、腸内細菌叢を抑制する事ができた。抗生物質の効果については便培養を行い確認した。そこで、抗生物質カクテル投与により、腸内細菌叢を抑制したマウスに従来通りの方法で脳動脈瘤を誘導したところ、腸内細菌叢が抑制された群においては、有意に脳動脈瘤の発生・破裂が少なく、生存率が向上した。腸内細菌叢が抑制されたマウスにおいては、脳血管へのマクロファージ遊走及び炎症性サイトカインの発現が減少している事を明らかにする事が出来た。研究結果の詳細については、現在、論文執筆を行っている。
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